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自動車と家電業界の実態を提示し両国の過剰反応を戒める――林廣茂『日韓企業戦争』阪急コミュニケーションズ
日韓の間には、それぞれ相手国に対する一方的な思い込みがある。過度の警戒、過度の反発、過度の比較、過度の優越である。お互いに虚像と実像を、冷静に判断する平常心を失わせるほど、過剰に反応する。
その最たるケースが、日韓の企業に対する過度の比較であろう。確かに、両国の企業は、グローバル市場において激突し、宿命のライバル視されている。なかでも、自動車、デジタル家電業界は、激烈な競争を国際舞台で繰り広げている。
たとえば、韓国の現代自動車は、いまや日産を追い抜き、小型・中型市場で日本車を激しく追撃している。BRICs市場においては、もはや日本車を追い抜いているとさえいわれる。
デジタル家電の分野でも、サムスンやLGの韓国勢は、半導体のほか、薄型テレビや携帯電話において、ソニーや松下、シャープなどの日本メーカーを凌駕する勢いだ。
これを受けて、韓国は、「もはや日本は敵にあらず」「日本から学ぶものはなし」と、過度の優越に浸る。一方、日本は、「韓国にオリジナル技術なし」「韓国のビジネスモデルはすべて日本のマネ」と、過度の反発を示すのが通例だ。
いったい、何が虚像で、何が実像か。本書は、自動車とデジタル家電を軸にその実態に迫っている。著者は、韓国企業でコンサルティングの経験があるだけに、その観察眼にはリアリティがある。
日韓両国の自動車メーカーが世界の需要の40%を供給し、薄型テレビでは世界の市場の65%を両国の家電メーカーが占めている。「世界中の道路という道路で、家庭という家庭で、トヨタ、現代、パナソニック、サムスンといった日韓発のブランドが大きく目立っていて、日々人々の生活に役立っている」と、著者はいう。
その両国が、過剰反応を排しながら、いかに協調し、発展していくか、重いテーマについて語っているが、ビジネスの世界にあってはお互いに切磋琢磨してこそ企業の成長があるのではあるまいか。
林 廣茂著『日韓企業戦争』阪急コミュニケーションズ
『週刊ポスト』(2008年1月4・11日号掲載)