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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

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日本の製造業は復興後もリスクから逃れられない――ジェフリー・K・ライカー、ティモシー・N・オグデン『トヨタ危機の教訓』日経BP社

震災後の日本を立て直すには、経済を支える基幹産業の復活が不可欠である。立ちすくんでいる暇はない。ただし、震災から復旧し、供給が元に戻れば、直ちに業績が上向くわけではない。

トヨタ自動車社長の豊田章男氏は、5月11日の2011年3月期決算発表会の席上、社長就任後の2年間を振り返って、次のように語った。「リーマン・ショック後の赤字転落、品質問題、大震災、本当に多くの困難が降りかかっています」

トヨタを襲ったリコール危機は、米運輸省が11年2月8日、「電子制御システムに急加速を引き起こすような欠陥は見当たらなかった」という最終報告をまとめたことから潔白が証明されたが、しかし、トヨタにとっては、一件落着とはいかなかった。品質に対する信頼が、大きく損なわれたからである。

ジェフリー・K・ライカー、ティモシー・N・オグデン著『トヨタ 危機の教訓』は、リコール危機の真相を明らかにするとともに、全米メディアから集中砲火を浴びるなか、トヨタがいかに難局を乗り越えたかを時間を追って詳細に記している。

著者のライカー氏は、トヨタの企業文化「トヨタウェイ」研究の第一人者である。したがって、本書は、単にリコールにまつわる事実を追いかけるにとどまらない。危機を「改善」のチャンスに転じ、各部門が問題解決プロセスに基づいて、危機の「真因」を探る過程は示唆に富む。危機発生時こそ、企業文化が重要であるというメッセージは説得力がある。

東日本大震災では、供給網の寸断が製造業を混乱させた。アナン・V・アイアーほか著『トヨタ・サプライチェーン・マネジメント(上・下)』は、震災の影響には触れてはいないが、ひとたびチェーンが寸断されると、生産活動にどのような影響が起きるかを知るには有用である。

長引く電力不足や調達の一極集中リスクから、日本企業の海外シフトが進むのではないかといわれている。ただし、日本企業にとって、戦略市場の新興国攻略は簡単ではない。小林英夫編著『トヨタVS現代』は、トヨタを追い上げる現代の独自の生産方式に触れ、両者の競争力を考察している。

日本の製造業は、復興後もリスクから逃れられない。

ジェフリー・K・ライカー、ティモシー・N・オグデン著 稲垣公夫訳『トヨタ危機の教訓』
日経BP社
アナン・V・アイアー他著 西宮久雄訳『トヨタ・サプライチェーン・マネジメント(上・下)』
マグロウヒル・エデュケーション
小林英夫編『トヨタVS現代』ユナイテッド・ブックス
『週刊エコノミスト』(2011年6月28日掲載)

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