Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

旅・夢風景

片山修が旅について語る。
日本各地の写真とコラムによる「旅夢風景」

伊豆稲取 桜と湯と美食巡りの旅

南伊豆の春は、花の季節の真っ盛り。 湯煙が立ちのぼる南伊豆町・下賀茂温泉を貫く青野川の両岸には桜の花。近くの日野地区には菜の花畑、さらに山々の新緑で、贅沢なほどカラフルである。 豪華絢爛。白髪三千丈式にいえば、百花繚乱。まさに夢心地ですな。
 izuinadori1青野川沿いの桜は、早咲きの河津桜(2月まで)と、その後3月下旬頃から咲く染井吉野があるので、2月~4月初旬頃まで咲いているし、黄色の菜の花も時期が長い。およそ1万5000㎡の田圃が一面に黄色の絨毯になる様は見物です。
 この2月、来の宮橋と九条橋の川岸の脇に、南伊豆町の瀟洒な「湯の花観光交流館」ができた。同町観光産業課長の山田昌平さんは「館内には足湯(無料)があり、また地元の農家330人 の会員による野菜などの販売も行なっています。また、押し花やキャンドルづくり等、様々な体験型のイベントを行なう予定です」という。

 3月末まで楽しめる、稲取温泉の「雛のつるし飾り」の美しさ
  イベントといえば、3月3日はひな祭り。東京から向かうと南伊豆の手前、稲取温泉の「雛のつるし飾り」の美しさには、いやあ、息を呑みました。
何でも、この「雛のつるし飾り」は、江戸時代後期、女の子の健やかな成長を願って、枕、羽子板、大根、柿、座布団など、身近にある品々を着物の端切れから手づくりでつくったのが始まりとか。

izuinadori5よく見ると、一つひとつの雛が、いまの言葉でいえば、じつにクール、カワユイのだ。大人、いや、オジサンだって、ホノボノと心の底から癒されますね。 

 稲取温泉文化公園に建つ「雛の館」にいくと、雛の段飾りを囲むように、天井から紐に結びつけられた、「つるし雛」がたくさん浮かんでいる。夢の中の光景といっていい。
  稲取温泉旅館協同組合の田村佳之さんは「つるし雛の種類は、およそ40種類ほどあります。これらの雛には、それぞれの願いが込められています。例えば、枕は“寝る子は育つ”、羽子板は“厄を飛ばす”といった具合です」と、教えてくれた。家族関係が益々希薄な今の世の中、考えさせられましたわな(「雛のつるし飾りまつり」は3月31日まで)。
  さて、稲取温泉にくれば、温泉に泊まらない手はないというので、相模湾に面した、地物の海の幸の料理でも名高い「いなとり荘」に宿をとった。
izuinadori3「稲取温泉は、戦後の開発ですから、伊豆の温泉の中では新しいほうですね」とは、同荘の女将さんの村木さとみさんの話。 口に含むと、ちょっとしょっぱい、弱アルカリ塩水の温泉は、湯船を出た後、ジンワリ、ジンワリと体に効きましたね。

小学館『週刊ポスト』 2009年3月20日号 掲載

ページトップへ