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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

旅・夢風景

片山修が旅について語る。
日本各地の写真とコラムによる「旅夢風景」

仙石原・強羅・宮ノ下 花と文化を愉しむ旅2

hakone2-3 箱根の初夏は、瑞々しい。山の緑を背に、色鮮やかな花々が溢れる。

 強羅にある『箱根強羅公園』では、ヤマアジサイを中心に珍しいアジサイが盛りだくさんだ。奥へ進むと、「ローズガーデン」のバラが満開。ヤマユリも美しい姿を見せてくれている。

ここのもう一つの目玉は、「白雲洞茶苑」だ。利休以来の茶人と称された鈍翁こと旧三井物産創業者のの益田孝男爵が建てた茶室で、純翁のあと、原三渓、松永耳庵に受け継がれた。明治・大正・昭和の近代三大茶人ゆかりの遺構である。特色は、〝田舎家の席〟で、カヤ葺きの農家づくり。そのたたずまいは、〝鄙〟。一服頂戴する。


 箱根は美術館の宝庫でもある。例えば、『箱根ラリック美術館』。仙石原の自然をいかした併設の庭は、〝寂〟。みごとな青々とした芝生。微風に揺れる木々。鳥の啼き声。半日いても飽きそうもない。
「ルネ・ラリックは、自然豊かなシャンパーニュ地方で生まれ、昆虫や草花を好んでモチーフに用いた、フランスを代表するガラス工芸作家です。仙石原の豊かな自然は、彼の作品を展示するのにうってつけなんですね。オーナーの念願叶い、2005年、この地に開館いたしました」
 と、箱根ラリック美術館支配人の眞利子博さん。


 ラリックが手掛けたジュエリーやガラス作品のほか、豪華列車「オリエント急行」のサロンカーが展示されている。なぜ? じつは、車内には、ラリックが制作したガラスパネルが飾られているのだ。走っていた当時のままの車内で飲むコーヒーは、一興ですな。


『ポーラ美術館』も、感動的空間だ。コンセプトは「箱根の自然と美術の共生」。なるほど、外観は森の風景に溶け込んでいる。威圧感がない。コレクションは、『睡蓮の池』を始めとするモネの作品を19点所蔵するなど、印象派、エコールド・パリなどの西洋絵画を中心に、国内最大級だ。観光地の美術館とはおよそ思えないほどの充実ぶり。贅沢な時間が過ぎていきました。


 このあと、明治11年創業の宮ノ下『富士屋ホテル』で遅めのランチ。
 食事のあとは、『箱根湿性花園』。ノハナショウブ、タマアジサイ、ヤマユリなど花盛り。日常のストレスを吹き飛ばしてくれましたね。
 そのままレンタカーで小田原駅へと戻り、湘南新宿ラインのグリーン車でゆったりと帰京しました。

小学館『週刊ポスト』 2009年7月17日号 掲載

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