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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

旅・夢風景

片山修が旅について語る。
日本各地の写真とコラムによる「旅夢風景」

新潟 晩秋の越後路で豪農の昔を偲び日本海の旬を食らう

新潟には、いろんな「顔」がある。
 たとえば、湊町の「顔」。新潟は、もともと阿賀野川と信濃川の河口と日本海が交わる湊町として栄え、幕末には、〝開港5港〟の一つに選ばれた。高さ140・5㍍の超高層の万代島ビル「朱鷺メッセ」展望室にのぼり、眼下に港をのぞむ。ただ、海上はるか、佐渡島は生憎と靄の中。残念。

niigata13食いしん坊ならば、まず頭に浮かぶのは、米どころではあるまいか。米とくれば、さらに寿司だ。では、どこで食べるか。これが問題。
 杖になるのが、寿司職人が生み出した〝新潟すし三昧〟「極み」シリーズに参加する新潟市内の24店。足を運んだのは、「せかい鮨本店」。三代目のご主人の吉沢俊哉さんは、こう語るのだ。
「新潟の寿司といえば、なんたって、シャリのコシヒカリに日本海の地魚です」
 ネタは、今の季節ならば、三面川にあがるサケの生のいくら。12月になれば、寒ブリという。感想をいえば、地物のノドグロの炙りが、もう、絶品でしたな。
 米とくれば、もう一つ、新潟の「顔」として越後の豪農をあげなければいけない。訪ねたのは、市内の田園地帯にある「北方文化博物館」。越後屈指の大地主の伊藤家の「豪農の館」である。

niigata101敷地8800坪で、周囲に土塁が築かれ、立派な塀がめぐらされ、濠が掘られている。圧巻は、邸宅だ。5代目の伊藤文吉によって明治15年から22年の8年の歳月をかけて建てられた。玄関が5つあるというから、想像を超える広さだ。
「戸板の開閉で、戸袋に入れるだけでも40分はかかります」というのは、8代目・伊藤文吉氏の長男、伊東英之さんだ。
 見ものは、百畳敷きの大座敷に面した庭園。もう、息をのむ見事さだ。庭園内に、趣の異なった5つの茶室があるという。これが、越後の豪農か、と目をむく。
 このほか、邸内には、野外音楽堂、さらに別棟には、スローライフをテーマにした、小さな旅館「大呂菴」まである。ウーン。もはや、脱帽するのみでしたな。

小学館『週刊ポスト』 2009年11月27日号 掲載

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