Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

旅・夢風景

片山修が旅について語る。
日本各地の写真とコラムによる「旅夢風景」

日本海に突き出た男鹿半島で ナマハゲだけじゃないアレもコレも


 奇岩連なる海岸線で吹く風に身を任せ

 

秋田県西部の日本海に突き出た男鹿半島は、古くからナマハゲが有名なところであるが、近年、観光地として脚光を浴びている。男鹿の〝素顔〟は、すこぶる興味深いのである――。

 日本海を一望のもとに見渡せる男鹿半島の最先端の入道崎は、ちょうど北緯40度線上に位置する。緯度線上には、安山岩で造形されたモニュメントが等間隔で並んでいる。その線上に立つと、何だか丸い地球が頭に浮かぶ。岬には、入道崎灯台がピンと立っている。灯台といえば、光を反射して目立つようにと白一色なのが普通だ。ところが、ヘンだ。シマウマでもあるまいに、白と黒の縞模様である。こんな灯台を見たことがない。いったいなぜなのか

〝灯台守り〟ならぬ入場券売り場に坐っていらしたご婦人に聞くと、「ここは吹雪くと真っ白な世界になります。白いと灯台があることさえわからなくなる。だから、白と黒に塗り分けているんです」との説明。なるほど。男鹿半島の観光の象徴となる山の名は「寒風山」という。シベリアからやってくる北風が思いやられますな。

男鹿半島は、そもそも「寒風山」の〝火山島〟であったのだが、山体の成長にともなって、日本列島と陸続きになり、半島に成長したという。意外に知られていないが、国定公園の男鹿半島は、日本ジオパークにも認定されている。過去7000万年にわたる大地の歴史をほぼ連続して観測できる地層がそろっているのだ。

そんなわけで、男鹿半島の観光の目玉の一つ水族館も、切り立った海岸線ギリギリの溶岩の岩場に建っている。男鹿水族館「GAO」だ。大水槽には、目の前の日本海に棲む40種1万点の生き物が展示されている。北限のタイやフグが気持ちよさそうに泳いでいるではないか。むろん、〝秋田県魚〟のハタハタ博物館の充実ぶりには、目を見張るものがある。人気者は、ホッキョクグマとペンギンだ。東北地方でホッキョクグマが飼育されているのはここだけだ。

誰が名付けたかゴジラ岩の咆哮が聞こえた初秋の岬

 

実際、男鹿半島の海岸線をぐるりとクルマで巡ってみると、海岸線は太古の昔、火山から流れ出た溶岩が固まってできた奇岩怪石によって埋め尽くされていることがよくわかる。テレビニュースでハワイ島のキラウェア火山の溶岩流が海に流れ出ているシーンを見るが、あんな光景が古代、男鹿半島誕生の頃に見られたに違いない……とクルマに揺られながら、空想してみました。

その奇岩怪石の一つが、潮瀬崎の〝ゴジラ岩〟である。3000年前の火山活動でできた岩が、長い年月をかけ、風雨をはじめ日光、潮のパワーによって少しずつ削られ、できあがった自然の〝作品〟だ。

なんでも、〝三大ゴジラ岩〟というのがあるそうだ。能登半島と知床半島、そして男鹿半島にあるのがそれだと聞く。私は、能登と知床のゴジラをいまだ見たことはない。しかし、男鹿のそれは、一番似ているのではないか……と思った。それほど夕陽に浮かぶ姿は、そっくりだった。

芳醇な潮の香りに満ちたここだけの海の恵みを堪能

 


男鹿半島の食といえば、ハタハタを別にして、有名なのが、漁師の生活の中から生まれた郷土料理〝石焼料理〟だ。秋田杉の桶に、秋田味噌のダシと新鮮な魚介類を入れ、真っ赤に焼けた石を投入して、瞬間的に食材に火を通す。宿泊先で石焼料理を楽しんだ。石は男鹿の火山岩で〝生き石〟〝金石〟と呼ばれる。ジューッという大きな音とともにバーッと湯気が一気に広がる。エンターテインメントな食でしたね。

秋田県男鹿市の網元直営加工食品のブランド「旬魚房 匠」の珍味がまた面白い。

「定置網に入った魚を工場で加工して、付加価値をつけ、販売しているんです。つまり、漁業の6次産業化ですね」と、同生産工場長の吉元一人さんはいう。

なかでも、男鹿沖の天然真鯛の希少な白子を使用した〝白子とうふ〟はじつに珍味だ。もう一つの珍味は水ダコのからすみだ。試食の結果を申せば、〝白子とうふ〟はじつにクリーミー、スライスした水ダコのカラスミも乙な味でした。秋田の辛口の酒がキュッと飲みたくなりましたな。

さて、男鹿半島の名物ナマハゲは、平成30年にユネスコ無形遺産に登録予定だという。「なまはげ館」と「男鹿真山伝承館」は必ず見なければね。私は、今回も両館を訪ね、感動したものです。

ページトップへ