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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

旅・夢風景

片山修が旅について語る。
日本各地の写真とコラムによる「旅夢風景」

少年に還り高く広い空を見上げては 高原を走る「星空列車」で宇宙に想いはせ


都会では忘れていた 頭上には星が光っていた

誰もが少年時代に満天の星空を見上げ、ロマンを搔き立てられた経験があるのではあるまいか。そんな昔に還って、旅をした。向かったのは、八ヶ岳山麓だ――。

JR中央線の小淵沢駅で下車。クルマで、標高1350メートルにある「国立天文台野辺山宇宙観測所」へ。

長野県南佐久郡南三牧村野辺山の草原には、まばゆいほどの白いパラボラアンテナが超然と立っていた。ミリ波観測で世界最大級の45M電波望遠鏡である。

アンテナの直径45㍍、アンテナの重量約700㌧。遠くから眺めても、近くで見上げても、息をのむ。デカいのだ。思わず「もう、負けるなァ」と、呟いたほど、圧倒的な存在である。

「天体からの電波は、とても弱いうえに、水蒸気に吸収されて弱められてしまうんですね。その点、野辺山は、よく晴れてカラッとした気候。周囲は山に囲まれ、都会からの電波を遮る環境は、宇宙電波の観測に最適なんですね」と、宇宙電波観測所特任専門の衣笠健三博士。しかし、シロウトには、電波望遠鏡といわれてもサッパリわかりませんわね。

一般に、光学望遠鏡は、星や銀河のように光を放つ天体をとらえる。これに対して、光を出さないマイナス260度の低温のガスや塵、すなわち宇宙に漂う〝星間物質〟の放つ電波を受信するのが電波望遠鏡――と、衣笠博士は丁寧に説明してくれた。

「ほかの星にも、人間のような生物がいるんですか」と、博士にぶしつけな質問をぶつけてみたら、「宇宙では、タンパク質の元になるアミノ酸が見つかっていないので、宇宙に生物がいるかどうかは結論が出ていません。ただ、45m電波望遠鏡を使った観測で、アミノ酸の前段階の物質のメチルアミンという分子が見つかっています……」。

なるほど、「野辺山宇宙電波観測所」は、ロマンが尽きないのである。

JR最高地点を疾駆して 星に近づく、これぞ高原列車

星といえば、小淵沢駅に戻り、小海線の土・日・祝日を中心に運転される高原列車「HIGH RAIL 1375(ハイレールイチサンナナゴ)」に乗る。

「1375」とは、JRの線で、日本一高い地点すなわち1375㍍を小海線が走るところからつけられた愛称だ。2両編成で、車内には〝ギャラリー HIGH RAIL〟が設けられ、半球体形のドームに星空映像が投影されるサービスが受けられる。さしづめ、車内で天井を見上げると、そこには満天の星がきらめくという仕掛けだ。途中、野辺山駅で下車しての星空観察会は星空案内人の解説付き。夏の宇宙を堪能しましたよ。

そして、野辺山の「宇宙電波観測所」の隣接地といえば、夏レタスの産地で知られる高原野菜の川上村だ。全村が標高1100メートル以上で、レタスの生産量は日本一だ。

ちょうど、今はみごとなレタス畑が広がる。川上村の3つの農協を合わせて年間総売上高は100億円から200億円といわれて、日本一裕福な農村といわれている。一軒当たりの平均収入は2500万円をこえるというではないか。ウーン、それだからだろうか、レタス畑で活躍していたトラクターは、いずれも運転台は風防付きだ。たしか、中には冷暖房装置が付いているハズだが……。さすが、裕福なレタス農家だと実感したものだ。

苔むす森を抜けると 神秘の池と日本一の白樺林

八ヶ岳の魅力は、天に星とすれば、地に自然だ。八ヶ岳はもとより、富士山、南アルプス、さらに北八ヶ岳にいけば、北アルプスも遠望できる。いたるところに絶景あり――だ。

北八ヶ岳東麓に広がる八千穂高原にまで足を延ばせば、日本三大原生林が広がる。その原生林にアクセントをつけるように、天然湖が点在する。

その一つ白駒の池周辺の〝苔の森〟には485種類もの苔が生息している。さながら太古の趣きだ。また、八千穂高原の白樺林は、約200ヘクタールにわたって広がっている。途中、八千穂の「きたやつハム」では、地場のブタ肉などでバーべーキューを堪能。聞けばなんと放し飼いだという。夏の二日間にわたり、100点〝満天〟で過ごしましたね。

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