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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタはなぜFCVの市販を急いだか

じつは、私は、トヨタがFCV(燃料電池車)の世界初の市販にこだわる背景には、
EVの存在があると思います。

トヨタは、25日、2014年度内に、FCVの市販を、
日本でスタートすると発表しました。
むろん、世界初です。
FCVは、ホンダが来年中、日産も2017年中に発売を計画しています。

トヨタのFCVと副社長の加藤光久氏

※トヨタのFCVと副社長の加藤光久氏

FCVは、水素を燃料とし、空気中から酸素を取り込んで、
水素と酸素を反応させて電気を起こし、モーターを回します。
排出するのは水だけの“究極のエコカー”です。
EV(電気自動車)に比べ、燃料の水素の充填時間は約3分と短く、
かつ航続距離も約700kmと長いため、
まさしく、次世代エコカーの本命と目されています。

トヨタは、97年にHV(ハイブリッド車)を世界で最初に発売しました。
「プリウス」で、HV市場を切り開いてきました。
発売当初は逆ザヤで、1台売るたびに50万円の赤字になるといわれました。
しかし、現在では、HV市場の主導権を握っています。
FCVにおいても、同様のパターンを狙っているわけです。

それから、ポイントは、価格だと思います。
トヨタは「税抜700万円程度」としているようですが、
政府の補助金の額は未定ながら、消費者負担は、
500万円程度に なればいいというのが、トヨタの本音です。
それでも、EVより高い。
日産「リーフ」の消費者負担は227万円程度ですからね。

次世代環境対応車をめぐっては、HVに加え、
PHV(プラグインハイブリッド車)、EV、FCVの間で、 激しい主導権争いがあります。
トヨタは、HVで世界の先頭を走っていますが、
ことEVについては、それほど積極的ではありませんでした。

EVは、航続距離が短い、充電に時間がかかるなど、
なんだかんだといわれながらも、ジワジワと実力をつけてきています。
日産はもとより、異色のベンチャー企業、
米テスラのEVへの参入も不気味ですよね。

そこで、トヨタは、FCVで、一気に次世代環境対応車戦争において、
トップに躍り出ようとしたという見方ができます。
何しろ、FCVの航続距離は、EVの3倍以上です。

トヨタは、次世代環境対応車市場において、
いつまでもHVの王座に安住していられません。
トヨタの次なる挑戦は、始まったばかりといっていいでしょう。

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