昨日、ソニーのパソコン事業が、VAIO株式会社として、
第二のスタートを切りました。
VAIOは、1996年に発表された、ソニーの家庭用PCブランドでした。
全盛期の2010年には、世界で約870万台を販売するなど、
高性能とデザイン性をウリに、一世を風靡しました。
私も、一時VAIOを使っていました。
しかし、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の普及に伴い、
家庭用PCは需要が低迷。中国や台湾メーカーとの価格競争も激化し、
採算が悪化しました。
ソニーは、今年1月にパソコン事業の分社化を発表。
新会社は、日本産業パートナーズが95%、ソニーが5%を出資しています。
VAIOは、ソニー時代の長野県安曇野の工場を引き継ぎ、
本社もそこに置きます。
ソニーの後ろ盾を失ったVAIOは、今後、再生することができるのか。
悲観的な話は、たくさんあります。
規模が小さくなって、調達力が落ちるとか、
経営幹部がソニー時代と変わり映えせず、変化が期待できないとか、
パソコンの市場規模は、今後減少傾向が続くとか……。
確かに、環境は厳しいものがあるのは事実ですね。
しかしながら、ソニーから離れたということは、逆にいえば、
ソニーではできなかったことが、できるということでもあります。
つまり、昨日の会見で、社長の関取高行氏が話した通り、
「しがらみや思い込みに左右されない、速くて変化に強い」
会社になれるかどうかです。「とんでもないけど、商売になる」(関取氏)
商品を出すといっていましたが、それを本当に投入できるかですよね。
本体だったソニーについていえば、輝いていた時代は、いまや昔話です。
一時の成功のうえにあぐらをかき、内向きになり、守りに入った。
組織は重く遅くなり、自由闊達と謳われた風土は、
いつの間にか、「出る杭を打つ」風土になりました。大企業病に陥った。
そんなソニーに見切りをつけ、退社して、
自分の進みたい道へ突き進む技術者は、少なくありません。
いわゆる「やめソニー」たちです。
VAIOに残った従業員は、自分が信じる技術を突き詰め、
自由に、小回りのきくベンチャー企業として、新たな道を切り開けるかどうか。
当然、ソニー時代の甘えは、一切捨て去らなくてはいけません。
1100人いた従業員数は、配置転換と希望退職によって、
独立後、240人に縮小しています。
「ソニー」の看板よりも、「VAIO」という商品や、
その技術に愛着をもち、強い意思をもったメンバーが残っているはずです。
VAIOは、15年度に黒字化を目指しますが、販売目標は30~35万台と、
最盛期の25分の1でいい。リスクをかけた挑戦ができます。
VAIO復活の条件は、
経営陣と、従業員一人ひとりの覚悟でしょう。