イスラム教徒、いわゆるムスリムといえば、厳しい戒律で知られています。
日本では、彼らの文化に接する機会は少なかったんですが、
最近、町中で、アジアからのムスリムの観光客を見る機会が増えてきました。
ジルバブと呼ばれるスカーフを頭に巻いた女性は、それとすぐわかりますね。
ムスリムは、現在、世界全体の人口の約2割を占めます。
うち約6割がアジアに住んでいて、アジアのムスリム人口は10億人近いのです。
日本でも、大相撲界に、ムスリム初の力士として大砂嵐が誕生しましたよね。
夜明けから日没まで飲食できない断食月の「ラマダン月」が、
今年は名古屋場所の全日程とかぶるなか、
健闘ぶりが報道されているのは、ご承知の通りです。
グローバル化が進むなかで、
日本もムスリムとの接点が増えているということですわね。
一例として、ムスリム市場をターゲットとしたビジネスがあげられます。
観光は、その一つでしょう。観光立国を掲げる日本は、
アジア10億人のムスリムを呼びこまない手はありません。
そのためには、空港やホテルにお祈りのための設備を設けたり、
ツアーにお祈りの時間を組み込んだりする配慮が求められます。
食事も、豚肉やお酒を使わないのはもちろん、肉の処理の仕方など、
「ハラル」に適合した食事を用意しなくてはいけません。
アジアに10億人のムスリムがいるのだから、
日本は、もっともっとムスリムにやさしい国になっていいはずです。
また、ビジネスチャンスといえば、日本の食品メーカーは、
商品のハラル認証を受けることで、ムスリム市場に入り込むことができます。
例えば、きのこメーカーのホクトは、きのこのハラル認証の取得をめざし、
イスラム圏への市場拡大をねらっています。
味の素は、「ハラル管理基準」を設けて、原材料の選択から生産方法にいたるまで、
イスラム教の戒律に準拠した品質管理体制をつくっています。
それから、イスラム圏に工場や事務所を構える日系企業には、
さまざまな配慮が求められます。
例えば、ムスリムは一日5回、お祈りをしますが、
勤務中にも、当然、お祈りの時間はやってきます。
その時間を「勤務時間」とするのか、「勤務時間外」とするのか。
さらに、工場内には、お祈りのためのスペースや、
手足を清める洗い場も必要になります。
ほかにも、人にものを渡すときに“不浄”とされる左手を使わないとか、
ラマダン月は作業効率が落ちたり、残業時間が減ることに対応して、
前の月にあらかじめ増産しておくとか、
ラマダン月の後のレバランと呼ばれる祭りには、
みんな里帰りするので休暇を設けるとか、
イスラム国ならではの配慮は、いろいろと必要になります。
ムスリムは、一般的な日本人とは異なる文化や習慣をもつ人たちの
わかりやすい例だと思います。
日本企業は、グローバル化やダイバーシティの対応が
欧米のグローバル企業に比べて、遅れているといわれています。
ムスリム対応こそは、日本人が多様な人たちと普通に付き合い、
当たり前に仕事をすることができる
“ダイバーシティ社会”確立のための試金石になるのではないでしょうか。