これまでも、何度か植物工場に触れてきましたが、
いま一度、いや二度目、三度目かな、愚考してみます。
旧聞に属しますが、今年8月、
パナソニックの子会社「パナソニック ファクトリーソリューションズ
アジアパシフィック(PFSAP社)」は、
シンガポールのハイテク野菜工場で栽培・収穫した
ミニ赤大根、サニーレタス、水菜を、
同国内で日本食レストランを展開する「大戸屋」に供給することを発表しました。
去年、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことで
一躍脚光を浴びた「和食」ですが、
グローバル化はなかなかハードルが高いといわれます。
実際、高級和食レストランが海外のホテルに出店するケースは増えてきましたが、
庶民の味を世界で展開している外食チェーンはそれほどありません。
この点「大戸屋」は、急先鋒といっていいでしょう。
シンガポールのほか、タイやインドネシア、ベトナム、台湾など、
6つの国と地域で約80店舗を展開し、「定食」というかたちで、
大衆的な和食のグローバル化を進めています。
では、なぜ、「大戸屋」は、
植物工場で収穫された野菜の使用を決めたのでしょうか。
いくつか理由が考えられると思います。
一つはコスト面でのメリットです。
指摘するまでもなく、和食にとっては不可欠だが、
シンガポール国内では栽培されていない食材が数多くあります。
こうした食材を日本から輸入するのも一つのテですが、
輸送コストがバカになりません。
その点、現地の植物工場で生産された野菜を使えば、
輸送コストを大幅に抑え、
輸入品の半分ぐらいの価格を実現できるといわれています。
植物工場の助けを借りることで、
「定食」を文字通り”庶民”の味として提供できるというわけですね。
それから、安全面でのメリットもありますね。
日本は「水と安全はタダ」の国といわれることがありますが、
この常識は海外では通用しません。
例えば、生野菜サラダをつくるには、まず野菜を洗わなければいけませんが、
水道水がそれほど清潔ではない、というケースが少なくない。
野菜工場は、ホコリや雑菌が入らないように徹底的に管理され、
無農薬栽培が行われていますから、
収穫した野菜は洗わずに、生で食べることができる。
食の安全性を比較的容易に確保できることが、
海外では大きなメリットになるわけですな。
今月5日のブログ(「植物工場は野菜高騰の救世主」)にも書いたことですが、
安定供給が可能という点もメリットの一つでしょうね。
品質ならびに価格の安定性を得ることができることが、
外食産業にとって大きな武器となるのはいうまでもありませんわね。
これらのメリットを考えると、
植物工場が、「和食」のグローバル化を進めるうえで、
強力なタッグパートナーとなる可能性を秘めているのは間違いないと思います。
今後、大切なのは、「パッケージ型輸出」の発想ではないでしょうかね。
インフラビジネスと同じで、より上流・下流を担う企業と緊密に連携しながら、
海外展開を進めていくことが、日本の強みを最大限に生かすことにつながると思います。
それにしても、過日、新橋の大戸屋に行きましたが、
あまりにスマートになったことにびっくりしましたね。
メニューも洗練されていました。
昔、池袋の大戸屋に行ったときには、
一膳飯屋の延長線上のような位置づけだったと思いますが、
今は、海外でも十分に通用するコンセプトにまで練り上げられている印象です。
定食が“TEISHOKU”になる日もそう遠くないでしょうね。