Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

「新会社サントリービール」の狙いは?

サントリーホールディングスは昨日、サントリー酒類を
スピリッツ事業とビール事業に分割し、ビール事業については、
新会社のサントリービールが経営を行うことを発表しました。

DSC07125

※サントリー新社長就任発表会見時の新浪剛史氏

新浪氏の社長就任発表後、ビール事業の分離・分社化のニュースが流れました。
当時、サントリーは「報道された内容について、具体的に決定した事実はありません」
と、HPなどで否定しましたが、今回、満を持してビール事業の分離・分社化が
決定されたというか、やはり、ビール事業の分社化は避けられなかった
ということになりますかね。
では、なぜ、サントリーはビール事業の切り離しを決断したのか。

もとより、ウィスキーを主とする蒸留酒を扱うスピリッツ事業とビール事業とでは、
扱う製品はもとより、オペレーションのあり方が異なります。
したがって、一つの会社がスピリッツ事業とビール事業を管理することには、
もともと不都合がありました。
また、スピリッツがおもに海外市場をターゲットとしているのに対して、
ビールは国内市場という違いもあります。

新会社サントリービール設立の背景には、「ザ・プレミアム・モルツ」
の成功があるのは確かでしょう。
ご存知のように、「プレモル」は、前身の「モルツ・スーパープレミアム」
がスタートした1989年以降、地道な研究改良が続けられ、
05年にはモンドセレクションビール部門で日本勢初の最高金賞を受賞、
08年、「プレモル」のおかげで、サントリーは46年目にして
ビール事業の黒字化を果たし、業界3位に浮上しました。

DSC07753

※サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」

いまにして思えば、「プレモル」の成功は、ビール事業の
分離・分社化の布石だったと考えられなくもない。
「プレモル」の成功のもとに、盤石な体制を築くことができたからこそ、
ビール事業は一人立ちできた。
そこには、したたかな戦略ストーリーがあるといえます。

10月1日、新浪剛史氏がサントリーホールディングスの新社長に就き、
いよいよ新浪新体制がスタートします。
サントリーが1899年の創業以来初めて、創業家以外から
社長を迎えるのは、同社をグローバルに成長させるために他なりません。
いよいよ、グローバル市場で世界大手と競うことになるわけですが、
ビール事業の分離・分社は、そのための体制固めと考えていいでしょう。

新浪新社長に期待されているのは、海外展開の加速です。
サントリーは、09年、仏飲料大手オランジーナを買収したほか、
この1月には、米酒造大手のビーム社を買収しました。
その果実をとっていくと同時に、海外事業を飛躍的に拡大することが求められる。
分離・分社化により、酒類とビールが別々の会社になれば、責任が明確化されます。
分離・分社は、それぞれの事業の成功にとって、有効な手立てといえます。
新会社サントリービールの設立は、サントリーが真のグローバル企業
となるための欠かせない戦略と考えてよさそうです。

ページトップへ