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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

なぜ、ホンダの福祉車両は売れるのか

ホンダ「N BOX」+の車いす仕様車は、2013年度6259台を販売。
ホンダの福祉車両として過去最高を記録しました。なぜでしょうか。

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平成19年度に内閣府が実施した「高齢者の健康に関する意識調査」では、
要介護状態になっても、自宅や子供・親族の家での介護を希望する人が
4割を超えました。
要介護者の生活の場は、もはや施設だけでなく、家庭へと広がっています。
日本自動車工業会によると、2013年度の福祉車両の販売台数は、
前年度比2.5%増の4万4189台で過去最高となりました。
なかでも、軽自動車の福祉車両の販売台数の伸びが顕著なことから
家庭用の福祉車両が増えていることがわかります。

ホンダは、その流れを読んでいたといったらいいでしょうか。
「あえて福祉車両専用車とせずに、普段使いの“兼用車”としたことが
大きかったと思います」
と、東京ビッグサイトで10月1日から開かれている「国際福祉機器展2014」
の会場で、本田技研工業日本本部販売部福祉事業室室長の西田晴泰さんは語りました。

ホンダが、福祉車両と普段使いの“兼用車”という新しいコンセプトを
打ち出した背景には、じつは、要介護者のみならず、
“家族みんなの車”という考え方があるのは間違いないでしょう。
ホンダは「移動の喜びを一人ひとりに」というテーマを
「国際福祉機器展2014」で掲げました。
体の不自由な人、介護が必要な人を含めて、家族みんなで快適に
楽しく生活するための車でありたいというのが、ホンダの考え方です。

例えば、車いすのまま、乗り降りする場合、バックドアを開けてスロープを
電動ウインチで車いすを乗り入れることができる。
普段使いには、スロープを床に倒して収納し、マルチボードを使えば、
空間を多様に使える。
車いす仕様車としてだけでなく、日常生活からレジャーまで幅広い用途に
使えることが、「N BOX」+の車いす仕様車の販売が伸びた要因というわけです。
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これからの課題として、西田さんは、
「さらにコストダウンを進める必要があると思います」と語ります。
ホンダは、「N BOX」+の車いす仕様車をインライン生産しています。
特別のラインを設けずに、通常の生産ラインでいっしょに生産することで
価格を抑えています。

また、車いす仕様車は販売台数が少ないため、事業化がむずかしいと
いわれていますが、ホンダの福祉車両は黒字を確保しています。
黒字化を達成し、事業として成り立たせることは、
安定的な価格で商品を提供するためにも重要なのです。

家庭用の福祉車両は、施設用の福祉車両とはニーズが違うはずです。
ホンダの打ち出した“家族みんなの車”というコンセプトは、
福祉車両に新しい風を吹きこんだといっていいでしょうね。

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