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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

消防車のモリタが開発した”介護用品”

介護業務には、腰に負担のかかる仕事が多くあります。
例えば、介護者を頻繁に抱きかかえるといった動作です。
被介護者の負担を軽くするには、どうすればいいか。
モリタは、前屈作業が楽にできる画期的なウェアを開発しました。
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モリタは、1907年創業の消防車のトップメーカーです。
ポンプ車からはしご車、コンビナート向けの消防車や空港用の消防車など、
幅広い消防車の開発、製造、販売を手掛けています。
なぜ、消防車の会社が腰部サポートウェアを開発したのか。
「消防の仕事は、前屈や中腰姿勢をとることが多く、
腰への負担が大きいんですね。
そこで、消防士の腰の負担を軽減する技術の研究を
積み重ねてきました」
モリタホールディングス技術研究所研究開発室の西濱里英さんはいいます。

消防士の腰の負担の軽減目的で開発された技術が、介護現場のニーズと結びついたのです。
商品の開発は、人間工学の第一人者、慶應義塾大学の山崎信寿名誉教授との共同で行われ、岡山市のダイヤ工業が製造しています。

腰部サポートウェア「ラクニエ」がそれです。
背中に配置された弾性生地が、前屈みの背中の伸びに合わせて伸び、
腰の負担を小さくします。
加えて、弾性生地の配置を工夫することで、前屈み時だけサポート力を発揮し、
それ以外の動作を邪魔することがありません。

「介護現場に本格的にロボットが導入されるのは、もう少し先になる
のではないかと見ているんですね。
そうだとすると、これから数年の間、介護現場ではサポートウェアのような
ものが重宝するのではないでしょうか」
と、モリタホールディングス執行役員 管理サービス本部 広報室長の
浦野ヒロ子さんは語ります。

確かに、介護ロボットは価格が高く、導入は簡単ではありません。
ましてや家庭介護で、ロボット購入は現実的ではない。
その点、「ラクニエ」の価格は、2万3000円と比較的手ごろです。

また、慣れると30秒程度で装着が可能だといいますから、
日常的に使える手軽さもあります。
「介護現場では、簡単であること、手軽であることは、
とても大切だと思うんですね」
と、浦野さんは話します。

「ラクニエ」は、介護現場だけでなく、農作業の現場でも活用できます。
農林水産省の2009年の調査によると、日本の農業就業者は、
6割が65歳以上の高齢者だといいます。
お年寄りが長時間、しゃがんだ姿勢を続けるのは大変です。
「ラクニエ」は、筋肉への負担を軽減することから、高齢者が楽に農作業を
するのに役立ちます。

優れた独自技術をもつ企業は多い。
しかし、技術の商品化は簡単ではありません。
モリタは、消防車から生み出された技術にこだわり抜き、
介護、農業という新しい市場に挑戦しました。
そこに見られるのは、自社技術を徹底的に掘り下げる力だと思います。

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