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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

外食産業も脱デフレか?

いま、外食産業に大きな地殻変動が起こりつつあるのではないでしょうか。
11月29日付の東洋経済オンラインに掲載されていた
「幸楽苑『290円ラーメン』販売中止の衝撃」という記事の話です。

ご存知の方も多いと思いますが、
幸楽苑は、福島県会津市に本社をおくラーメンチェーンです。
格安ラーメンを武器として急成長を遂げ、
関東地方や南東北地方を中心に、約500店舗を展開しています。
郊外に車を走らせると、
ロードサイドに「昭和29年創業 中華そば 幸楽苑」
と書かれた、デカい看板を目にする機会が増えましたよね。

幸楽苑のいちばんの看板メニューが、
今回話題となっている「290円ラーメン」です。
私も数回食べたことがありますが、
まあ、カップラーメンに毛の生えたような値段ということもあって、
オーソドックスであったかいラーメンが食べられるだけでも、
お値段以上の価値を感じられる商品であることは間違いないと思います。

ところが、幸楽苑は、
2015年4月をめどに「290円ラーメン」の販売を中止し、
主力商品を500円台の新しょうゆラーメンに切り替えるという。
つまり、低価格志向から高単価路線への転換を図るというわけです。
それどころか、成長エンジンを一気に取り換える決断ですよね。
背景には何があるのでしょうか。

記事によると、「290円ラーメン」は、
およそ10年前の投入時には、全売上高の32%を占めていたものの、
現在は17%にまで落ち込んでいる。
加えて、昨今の食材費、電力料、人件費のコストアップにより、
利益がますます圧迫されている。
つまり、「290円ラーメン」をどれだけ売っても、
なかなか儲からない構造になっていた。
だから、付加価値をつけた高価格のメニューを看板へと挿げ替えて、
きちんと利益を出せる仕組みをつくる。
これは、まあ、納得できる話ですよね。

記事には、幸楽苑社長の新井田傳さんのコメントが紹介されています。

「(幸楽苑が14年10月から販売している)
大好評の岡山県限定ラーメンを見て、
290円の中華そばをやめる決心がついた。
今の外食業界は低価格路線が失敗している。
高単価商品で勝負するグッドタイミングだと感じた」

おっしゃるとおりだと思います。
実際、外食チェーンの値上げは幸楽苑に限った話ではありません。
牛丼の吉野家は、牛丼(300円)に加えて、
10月末から「牛すき御膳」(630円)を販売しています。
松屋は7月、普通の「牛めし」(290円)の販売を終了し、
「プレミアム牛めし」(380円)を発売しました。
また、餃子の王将は、通常のメニューよりも3割ほど高い、
「極王シリーズ」を販売しています。
これらは、高価格・高付加価値のメニューづくりによって、
客単価を上げたことで、利益の確保に成功したケースといえますよね。

消費者の嗜好も変わってきたと思います。
デフレ時代は、とにかく安い商品が求められました。
しかし、昨今、マクドナルドが大苦戦していることからも明らかなように、
ただ安いだけでは消費者のニーズを捉えることはできません。
それなりに安くて、しかも安全で、おいしいもの、
すなわち価値がなくてはいけないのです。

まあ、いかなるかたちであれ、
外食産業がデフレ領域から抜け出しつつあるのは
間違いないのではないでしょうか。
フトコロに痛いという声もあるでしょうが、
まあ、日本経済にとっては悪いことではないでしょうな。

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