12月3日付のネットメディア「CNET JAPAN」に
印象的な記事が掲載されていました。
米国アマゾンのCEOジェフ・ベゾスさんの話です。
記事によると、ベゾスさんは、2日に開催されたある講演会の席上、
投資家が支出抑制を要求しているのにもかかわらず、
なぜ、攻撃的な成長戦略を展開する必要があるのかという指摘について、
「企業が危険を冒すことを止めてしまい、ゲームの終盤で生き残るために
苦肉の策を講じざるを得なくなることの方が重要な問題だ」
「大胆な賭けをして、多くの失敗に資金を投じる。
私はAmazon.comで何十億ドルにも相当する失敗を重ねてきた」と
述べたそうです。なるほど……ですね。
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんの
“1勝9敗”哲学に共通する部分がありますね。
ひとことでいえば、企業が持続的な成長を実現するには、
守りに入ってはいけないということですよね。
社会が大きく変化するなかで成長を続けるには、常に攻め続けなければいけない。
失敗を恐れて、何もしないことが
最大のリスクになるということでしょうね。
じゃ、日本企業は攻めているといえるのか。
財務省が今月1日に発表した
2014年7-9月期の法人企業統計によると、
企業の内部留保は323兆7000億円で、過去最高を記録しました。
また、11月21日付の日経新聞で触れられていたことですが、
上場企業は配当と自社株買いにより、
株主配分を一段と増やす傾向が高まっています。
例えば、カシオ計算機や金属加工機械のアマダは、
利益の9割以上を株主配分に充てている。
これらは極端なケースだとしても、
株主配分を手厚くする流れは、ほかの企業でも加速していますよね。
記事でも述べられていることですが、
業績回復や資本効率改善への意識の高まりなど、
さまざまなステークホルダーに目配りしながら「成長の果実」を
バランスよくわけあう環境が整いつつあるのは間違いないでしょう。
一橋大学准教授の野間幹晴さんは以前、
「米国企業は株主への配当が多いのに対して、日本企業の配当性向は低い」
「米国企業は短期的あるいは近視眼的な投資を行うのに対して、
日本企業は長期的な視野に基づいて設備投資や研究開発投資を行っている」
という通説は正しくないと論じました。
野間さんは、日本企業の衰退の一因は、投資よりも配当を重視して、
企業にとっての競争力の源泉である、R&D投資や設備投資を
削減していたことにある、と指摘しています。
株主還元によって一時的に株価が上昇しても、
企業の本質的競争力は高まるわけではない。
だとするならば、すこしずつ余裕が出てきたいまこそ、
日本企業はリスクを取って、成長が見込める分野に
投資を振り向ける必要があるのではないか。
ベゾスさんがおっしゃるように、攻撃的な成長戦略のもと、
競争力を高めることを通して企業価値、
ひいては株主価値の向上を図ることが大切だといったところですよね。