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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

巨人マイクロソフトは甦るか?

今月21日、米国マイクロソフト社は、
2015年後半に発売予定の次期基本ソフト(OS)
「ウィンドウズ10(以下「10」)」を、
「ウィンドウズ7(以下「7」)」以降のユーザーに対して
無料で提供すると発表しました。

マイクロソフトはこれまで、
数年おきに新OSを投入し、ユーザーに買い替えを促すことで、
「ソフト販売」を主要な収益源としてきました。
しかし、「10」については、発売後1年間に限り、アップグレードを無償化する。
これによる約590億円の減収分を、
「オフィス」などのクラウドサービスで埋める方針という。

OSの無償アップグレードは、グーグルの「Android」や
アップルの「iOS」「OS X」では当たり前の話ですが、
マイクロソフトにとっては、ビジネスモデルの大転換といっていいでしょうね。

14年2月にCEOに就任したサトヤ・ナデラ氏は、
「Office for Android/iOS」を発表するなど、
マイクロソフトの定番アプリケーションをさまざまなプラットフォームに展開し、
ウィンドウズとオフィスによる囲い込み戦略からの脱却、すなわち、
「ソフト」から「サービス」への転換を進めてきました。
今回の決断は、“ナデラ革命”が
ついに本丸に突入したことを意味しているといっていいでしょう。

また、1月23日付の日経新聞電子版でも報じられていることですが、
「ウィンドウズ8(以下「8」)」の失敗への反省があるのは間違いないでしょうな。

「8」は、タブレット時代の到来を見据えて、
タッチ操作に重点を置いたために、従来からのPCユーザーにとっては、
あまりにも使い勝手が悪いものになってしまいました。

じつは、私も「8」搭載のノートパソコンを発売直後に1台購入しましたが、
電源を入れて、唖然としたことを覚えています。
「95」以来、慣れ親しんできたのとは、まったく違う世界だったからです。
「7」からユーザー・インターフェースが大幅に変更されたことで、
スタートメニューを表示するのにひと苦労している人も多いのではないでしょうか。
電源を落とすのにも四苦八苦という状態でした。

「8」への移行率はなかなか上がらず、約1割にとどまっており、
ウィンドウズ・ユーザーのほとんどが、「7」や、
サポートが終了した「XP」を使い続けているといわれています。

しかも、この数年間で情報端末の主役がスマホやタブレットになったことで、
マイクロソフトは窮地に立たされました。
ウィンドウズは、PCでは9割のシェアを維持しているものの、
スマートフォンとタブレットを含む、
コンピューティングデバイス全体におけるシェアは約15%程度で、
グーグルやアップルに大きな後れをとっています。

一時代を築き上げた巨人だけに、急激な変化に対応できなかったのか。
あるいは、創業者ビル・ゲイツの“思考スピードの経営”が実践できなかったのか……
一昨日発表された2014年10-12月期決算で、
純利益が11%ダウンしたニュースをみる限り、
戦略転換が遅きに失した感は否めませんが、巨人はまだ死んでいません。

マイクロソフトが復活を遂げ、死の谷から甦ることができるかどうかは、
名経営者ビル・ゲイツ、スティーブ・バルマーの跡をつぐ
三代目のビジョンと手腕にかかっているといっていいでしょうね。

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