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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

中央環状線・全線開通の衝撃

来週3月7日、首都高湾岸線の大井ジャンクションと
3号渋谷線の大橋ジャンクションを結ぶ、
中央環状品川線(9.4km)が完成し、中央環状線が全線開通します。
都心をグルっと取り巻く、半径8km、総延長47kmの
“リング”が新たに誕生するわけですな。
今日は、中央環状線が東京にもたらすインパクトについて考えてみたいと思います。

もともと、首都圏の高速道路は、
1963年に総理府の首都圏基本問題懇談会が打ちだした、
“3環状9放射”構想のもとで、整備が進められてきました。
9放射については、東名や中央、関越、東北道など着々と整備が進められましたが、
中央環状線と外環道、圏央道の3環状の整備はなかなか進みませんでした。
構想のスタートから50余年を経て、中央環状線が全線開通するわけですから、
その歴史的意義は大きいといわざるを得ませんね。

では、環状ネットワークの充実によって、何が変わるのでしょうか。
まず、考えられるのは、速達性の向上です。
中央環状線の開通により、副都心エリアや関越道・東北道方面から羽田空港へ、
迂回することなくアクセスできるようになります。
例えば、首都高新宿入口―羽田空港出口の所要時間は、
渋滞ピーク時で、40分から20分に半減すると予測されています。
東京の国際競争力を強化するうえで、
都心から空港へのアクセス改善が不可欠だとしばしばいわれてきましたが、
中央環状線は、この問題を一気に解消するきっかけになるといっていいでしょう。

それから、定時性の向上も大きい。
現在、慢性的に渋滞している都心環状線を利用する車の約6割は通過交通です。
中央環状線の全線開通によって、都心環状線の通過交通が分散することで、
渋滞・混雑量の約4割減少が見込まれています。

もっとも、最近は、一昔前のような首都高が全く動かない、
一般道を走った方が早いという状態はあまりなくなりましたが、
イライラさせられることはまだまだ少なくありませんよね。
渋滞・混雑の緩和は、一般ドライバーはもとより、
物流・運輸業界のプロドライバーにとっても、朗報といっていいと思います。

中央環状線の全線開通のインパクトは、これにとどまりません。
東京を支える社会インフラを一新する可能性を秘めています。

例えば、開通から50年が過ぎた今日、
社会インフラの老朽化が深刻なものとなりつつあります。
首都高も例外ではありません。
構造物の耐用年数は、およそ30年から40年といわれますが、
首都高の総延長約300kmのうち約5割は、経過年数30年以上です。
危機的とはいわないまでも、本格的な修理に向けて、
待ったなしの状況であることに変わりはありません。

首都高は現在、総額6300億円をかけて、
大規模更新や大規模修繕をする方針を打ち出し、
橋の架け替えや床板の取り替えなどを実施するとしています。
ただし、いくら修理が必要だとはいえ、首都高は東京の大動脈。
交通をストップさせて、工事に集中するというわけにはいきませんわね。

この点、環状ネットワークを利用すれば、
工事区間を迂回するルートを自在につくることができます。
つまり、クルマを流したままで、更新・修繕工事を行うことができるのです。
老朽化対策をスムーズに進めるために、
環状ネットワークが大活躍するのは間違いありませんね。

このほか、中央環状線は、震災対策にも大きな力を発揮するはずです。
首都圏では、近い将来、直下型地震の発生が予想されています。
大地震が発生したときに求められるのは、
医療や自衛隊、消防、警察などの緊急的な人員や支援物資を
都心部へと輸送するルートの確保です。
中央環状線の完成により、ある路線が通行不能になっても、
迂回路を使って、都心を移動する可能性が広がりました。
しかも、中央環状品川線の大部分は、地震に強いトンネル構造です。
イザというときに、中央環状線が東京のライフラインとして
機能する可能性は十分に考えられると思います。

高度成長期からおよそ半世紀が経過した今日、
日本の交通ネットワークは新たな時代を迎えています。
奇しくも、中央環状線開通のちょうど1週間後の3月14日には、
JR東日本の上野東京ライン、北陸新幹線が開通し、
東京の交通ネットワークがガラッと変わります。
東京にとってこの3月は、
新たな50年の幕開けを告げる画期といっていいでしょうな。

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