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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日本はいまや“トヨタ頼み”

トヨタ自動車と国際オリンピック委員会(IOC)は、3月13日、
五輪の最高位のスポンサー契約である「トップパートナー契約」を締結しました。
自動車メーカーの「トップパートナー契約」は、トヨタが初めてです。
調印式の席上、豊田章男さんは終始、晴れやかな笑顔を見せていましたが、
その肩にかかる重圧は想像以上のものがありそうです。
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東京・千代田区の帝国ホテル本館3階の富士の間で開かれた調印式には、
IOC会長のトーマス・バッハさん、トヨタ社長の豊田章男さん、
IOC委員会委員の竹田恆和さん、東京オリンピック・パラリンピック競技大会
組織委員会会長の森喜朗さんが出席しました。
豊田章男さんは、五輪スポンサーを務める意義について、
「トヨタという会社を育ててくれた社会と、私自身を育ててくれたスポーツに
恩返しをしたい」と語りました。

契約金は、調印式では明らかにされませんでしたが、
10年間で2000億円、年間200億円になると見られます。
五輪スポンサーになれば、対象製品を優先的に供給できるほか、
五輪マークを営業活動で使用する権利が与えられるなど、
トヨタにとっては営業面で大きなメリットがあります。

とりわけ、2015年~24年の契約期間中、燃料電池車(FCV)
などの先進技術、高度道路交通システム(ITS)、テレマティクスサービス
などをアピールできるのは、願ってもない機会といっていいでしょう。

トヨタがそれら技術をアピールできるということは、日本の技術力が
広く世界に向けて発信されることにほかなりません。
その意味で、トヨタは、日本の産業界を代表して重要な責務を
引き受けたという見方もできるでしょうね。

じつは、“トヨタ頼み”は、2015年春闘についてもいえますね。
トヨタの春闘相場は、他産業に決定的な影響を与えるだけに、
バランスをもった水準を示すことが求められるというか、期待されました。
安倍政権は、デフレ脱却には賃金の引き上げが不可欠との姿勢を打ち出しています。
その意味で、政府も春闘のリード役としてのトヨタに対する期待は大きいものが
ありました。
つまり、政府も“トヨタ頼み”といっていいでしょう。

昨年より1300円多い月額4000円のベースアップで事実上決着しています。
その数字には、日本経済の行方を左右する、重い責任が託されている
といっていいでしょう。
これによって、今年の春闘は、高い相場で推移しそうですよね。
景気回復にはずみがつくに違いありません。

トヨタは、2015年3月期連結業績予想を上方修正し、
連結営業利益が前期比17.8%増の2兆7000億円の見通し
になると発表しました。
営業利益3兆円も目前といわれます。
こうなると、トヨタの社会に対する責任は、
ますます大きくなることが予想され、
“トヨタ頼み”がますます進むと、思われます。

ただし、なんでもかんでも“トヨタ頼み”は、社会をいびつにします。
トヨタに負荷がかかり過ぎるのはよくありませんよね。
何をいいたいかというと、トヨタ以外にも稼ぐ力をもつ企業が出てこなければ
いけないということです。
トヨタ1社で、日本が元気になれるわけはないのですから。

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