先日も書きましたが、シャープは、2015年3月期、2000億円規模の赤字になる見通しです。今期も、1000億円規模の赤字予想です。副社長と専務の計4人が、責任をとって、6月で取締役を退きます。
もはや、シャープは自力では再建不可能です。出資を要請していたみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は23日、2000億円規模の資本支援に応じる方針を決めました。
うがった見方をすれば、4人の首を差し出したのと引き換えに、融資を決めたということもできますかね。
先日、「底が見えない」と書きましたが、もはやシャープは“解体”に向けて秒読み段階です。本社ビルは売却され、主力の液晶事業は分社化される。シャープといえば液晶のイメージでしたが、それを分社化するとなれば、シャープはいったい、何の会社になるのでしょう。
テレビは、海外事業から撤退です。太陽電池も撤退します。残されるのは、洗濯機などの白物家電と、コピー機、国内のテレビ事業などです。もはや、シャープのイメージは薄い商品ばかりです。世界的な競争力をもつ商品は、正直、ありません。
分社化する液晶事業も、産業革新機構からの出資を受けようとしていますが、産業革新機構は、シャープの競合であるジャパンディスプレイの筆頭株主です。交渉は、思うようには進まないでしょう。
シャープが得意としていた液晶パネルに加え、テレビやパソコンなどの黒物家電、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電、さらに太陽電池などは、いずれも2000年代以降、コモディティー化が進みました。シャープに限らず、日本の家電メーカーは、中国や韓国など新興国メーカーに低価格戦略で攻め込まれ、世界市場から一気に駆逐されました。
それでも、日立や三菱電機、東芝などの重電メーカーは、交通インフラや発電設備などに生きる道を見出しました。三洋電機はパナソニックに子会社化され、そのパナソニックは、B2Bへと大きく舵を切りました。
ソニーは、以前書いたように、C-MOSなど競争力のある分野がまだ残っていますし、ゲームや映画などのコンテンツをもち、ソニー銀行やソニー生命などが収益源となっています。しかし、シャープには、もはや、「これだけは誰にも負けない」といえる武器がありません。世界市場に、居場所がない。
最大の懸念は、最後の武器である「人」、すなわち社員の心が、シャープを離れてしまうことでしょう。希望退職者を募ったり、給与を下げたりすれば、社員のモチベーションは下がります。一説によると、若手技術者は、いっせいに再就職先探しに動いているといわれています。沈没寸前の船から、ネズミがいっせいに逃げ出す構図といったら、いい過ぎでしょうか。
経営陣が、掲げた目標を達成できない状態が続けば、社員はトップを信頼しなくなり、求心力は衰えます。
もはや、黄信号どころか、赤信号が灯っています。人心が離れれば、それこそ、いきつく先は“解体”しかありません。