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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ソニー、やっとテレビ事業の黒字化達成

ソニーは30日、16年3月期の連結最終損益が1400億円の黒字になる見通しだと発表しました。売上高は7兆9000億円、営業利益は3200億円の見通しです。

「リストラの大きな部分は終了し、赤字、無配からようやく脱出しつつあります。とはいえ、まだ半分は病み上がりのような状況です。度重なる下方修正による市場の信任を早く回復したい」と、ソニー副社長、CFOの吉田憲一郎氏は、記者会見の席上、語りました。
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業績回復の背景には、C―MOSイメージセンサーなどのデバイス部門の下支えと同時に、テレビやパソコンなどの構造改革にメドがついたことがあります。実際、ソニーのテレビ事業は83億円の営業黒字で、11年ぶりに通期黒字化を達成しました。10年間の赤字にようやくピリオドが打たれたことになります。

「この3年間、固定費を縮小してきました。また、量を追わず、台数を減らすとともに、販路をしぼってきました」と、吉田憲一郎さんは、説明しました。

ソニーのテレビ事業は、05年3月期に赤字に転落しました。以来、「テレビの復活なくしてソニーの復活なし」として、ソニーの歴代トップがテレビ事業の黒字化を掲げてきたものの、その目標はことごとく未達に終わった経緯があります。

社長の平井一夫さんは、「テレビの復活なくして、ソニーの再生はない」と語り、固定費の削減や「4K」など高精細テレビへのシフトを進め、黒字化を目指しました。そして、14年7月、テレビ事業の独立性を高め、意思決定のスピードを引き上げるために、分社化を決断しました。そして、今回、11年ぶりに黒字化にこぎつけました。

「大がかりなリストラ」の成果がようやく出てきたわけですが、それにしても10年間、赤字をたれ流してきたことへの反省があってしかるべきでしょう。しかも、スマートフォンなど、ソニーにはまだ、課題事業が残されています。テレビの反省をそれら事業に反映させていくことが求められますよね。

まずは、なんといってもスピードです。テレビ事業では、なんでもっと早く手を打たなかったのかという場面がたくさんありました。実際、早く手を打てば、復活のチャンスはあった。驕りと油断、ブランドの過信があったのだと思います。

ブラウン管から液晶へのビジネスモデルの変革の遅れ、固定費の重さ、垂直統合への依存、韓国メーカーとの競争、グローバル対応の遅れ、販売の非効率化など、課題は数多くありました。

実際、アナログからデジタルへの転換は、コスト構造を大きく変えました。例えば、アップルのiPodは、固定費が極端に少なく、軽くて速いビジネスモデルなのに対して、ソニーのテレビは、旧来型の重いコスト構造を抱えたままで、コスト競争力がまったくありませんでした。

テレビとスマホについて、吉田さんは、「いったんしゃがむしかない。ボリュームを落とすことから始めて、次の戦略を考える」と説明しました。

つまり、いたずらに規模を追わず、違いや顧客価値を追う戦略への転換です。なにはともあれ、損失を出さないということですね。

ソニーは、18年3月期の連結営業利益5000億円を目標に掲げています。その実現に向けては、スマホとテレビの赤字は絶対に回避しなければいけません。そして、イメージセンサーやゲーム、映画や音楽でどれだけ稼げるか。いまは好調なデバイスも、市場変動のリスクと隣り合わせです。デバイスの下支えにいつまで甘んじられるかどうかは、予断を許さない。

「半分、病み上がり」のソニーが、健康体に戻るには、まだ少し時間がかかるでしょうね。

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