日産のカルロス・ゴーン社長は、昨日の決算発表の席上、16年度に国内生産が100万台を回復するという見通しを発表しました。これは、どういうことでしょうか。
ゴーンさんは、日産の国内生産台数100万台を掲げてきましたが、14年度、15年度ともに100万台を割っていました。消費税増による国内市場の縮小のほか、13年10月に北米向けのSUV「ローグ」の生産を日本から現地に移管したことが影響したんですね。
「国内生産は明らかに増えます。17年度はさらに増えます」と、ゴーンさんは、力を込めてコメントしました。SUV「ローグ」の生産を15年度に再び、福岡県の九州工場に戻すからです。
「為替レートを勘案すれば、国内生産のほうが断然有利」と、ゴーンさんは席上、語りました。いったんは海外に移した生産を国内に戻す理由は、ズバリ為替戦略です。日本からの輸出を増やすほうが有利と見ているわけです。
一度は海外に出た生産が、日本に戻ってくるのは朗報ですね。国内回帰は、サプライヤーや雇用にプラスになります。
実際、日産は円高時、海外製部品の調達を拡大したことを見直して、一部を国産に切り替える方針を明らかにしています。
サプライヤーにしてみれば、円安頼みの国内回帰だろうが、国内工場の稼働率の改善につながります。
日産の“国内生産回帰”は、すなわち輸出モデルの国内生産が増えるということです。日産の国内販売は13%減と引き続きマイナスです。
日産はこのところ、国内での新車投入が少なく、国内向けの車種で生産台数を稼ぐことはむずかしい。このことも、国内販売が増えない理由といっていいでしょう。
ホンダもメキシコ工場で生産する米国向け小型車「フィット」の生産の一部を、埼玉県の工場に移すと発表しました。ホンダの国内回帰も、同じく為替戦略です。
円安頼みの国内回帰では、かりにも円高に逆戻りすれば、再び空洞化が進む恐れがあり、単純に喜んではいられないわけですが、とりあえず、歓迎すべきニュースといっていいでしょう。