東芝のインフラ工事の不適切会計問題が、波紋を広げています。シャープも、深刻な経営危機を迎えています。その共通点はコーポレート・ガバナンスの欠如にあります。
東芝は、過去の決算において、営業損益を減額する修正が必要な工事が9件あるといいます。14年3月期までの3年間に、営業損益ベースで500億円強の影響が見込まれ、第三者委員会の調査によって、さらに膨らむ可能性も指摘されています。
重電を代表する大企業の不適切会計です。業績に関する数字は、社内外にとって大切な指標です。それが修正されるとなれば、投資家の信頼を損ねます。従業員も、会社に不信感をもつのは当然ですね。
前回のブログでは、シャープのガバナンスについて触れましたが、じつは東芝にも、似たような問題があります。報道されているように、前会長の西田厚聰氏と、副会長の佐々木則夫氏の間の確執です。
05年に社長に就任した西田氏は、原子力と半導体に傾注し、米ウエスチング・ハウス社の買収など積極的な投資で拡大路線をとりました。しかし、08年のリーマン・ショック後、巨額赤字に転落。09年、西田氏は、次期社長に佐々木氏を指名し、会長に就きました。
しかしその後、自ら指名したにもかかわらず、佐々木氏と対立関係を深めます。西田氏は、週刊紙上で、公然と佐々木氏を批判したこともあります。
13年には、佐々木氏の後任として、田中久雄氏が社長に就きました。しかし、会長には西田氏が留まり、佐々木氏は、戦後初めて復活した「副会長」となりました。同時に、一度常任顧問に退いていた室町正志氏が、取締役に復帰。この社長交代を発表する会見は、席上で西田氏と佐々木氏が批判し合い、異様な雰囲気だったのを記憶しています。
この人事の背景には、経団連会長の座を狙っていた西田氏の思惑があるといわれています。
さらに14年、西田氏が相談役に退くと、室町氏が佐々木氏を飛びこして、社長経験がないまま会長に就任し、佐々木氏は副会長に留まりました。これもまた、西田氏の思惑といわれています。
こうした経営トップ陣のゴタゴタが、今回の不適切会計問題に、直接的に関係あるかはわかりません。しかし、まったく無関係ともいえないでしょう。
指摘するまでもなく、社内のゴタゴタ、すなわちコーポレート・ガバナンスの欠如は、さまざまな形で経営に影響を及ぼしますよね。
本来、経営者には、社内の人事抗争にとらわれているヒマはないはずです。保身に走り、内向きになっていれば、たちまち、厳しいグローバル競争によって淘汰されてしまいます。
シャープ経営危機も、コーポレート・ガバナンスの欠如が指摘できます。町田勝彦氏は、自ら後継者に指名した片山幹雄氏と対立しました。“二頭政治”です。トップの対立にともなう液晶をめぐる事業戦略の迷走、つまり次々と、パネル需要の読みの外れ、また戦略の二転三転を招き、現在のような危機的状況に追い込まれたといっていいでしょう。
信頼に足るコーポレート・ガバナンスのない企業に、明るい将来はないということですね。