パナソニックは18日、住宅用の太陽電池モジュールの増産に向けて、島根、滋賀の2工場に合計95億円を投資すると発表しました。2016年度までに太陽電池の生産能力を約1割増の年100万キロワット以上にする計画です。
メガソーラーの事業環境が楽観できないなかで、なぜ、パナソニックは太陽電池に投資するのでしょうか。果たして、採算はとれるのでしょうか。
現在、日本の各地にメガソーラーが続々と建設され、稼働を始めていますが、電力の需給調整などの課題があり、100%有効活用できているとはいえません。また、メガソーラーは価格競争が激しく、採算をとるのがむずかしくなっています。
現に、シャープをはじめ、メガソーラー向けの製品に力を入れていた企業は軒並み、採算を悪化させています。
じつは、パナソニックが目をつけているのは、メガソーラーなどの産業用ではなくて、戸建て住宅用の屋根置き市場です。この点がポイントです。
もともと、パナソニックは住宅向けの太陽光発電技術に強みをもち、住宅用に限っていうならば、国内シェア3割で首位を独走しています。これまで、あえて住宅用に集中してきたことが、功を奏したといえそうです。
実際、パナソニックは、三洋電機から受け継いだ「HIT」ブランドで、住宅用太陽電池事業を展開してきました。
「『HIT』シリーズは、高効率、そして高温に強い温度特性をもつのが特徴です。限られた屋根でもたっぷり発電でき、発電量は業界トップクラスです」と、記者会見の席上、パナソニック エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部ソーラービジネスユニット長の吉田和弘さんは説明しました。
今後、電気料金は上昇が見込まれています。そうしたなか、消費者は節電意識を高め、住宅用太陽光発電システムが急速に普及すると、パナソニックは見ているんですね。
「これからは、太陽光発電がついて当たり前の商品になってくると考えます」と、吉田さんはいいます。
また、太陽光発電システムに加えて、エコキュートや蓄電池、省エネ家電などと連携した「スマートHEMS」で、トータルにエネルギーマネジメントを提案できるのも、パナソニックグループならではの特徴です。
全国15万店におよぶ広い販売網も、パナソニックの強みです。太陽電池はいったん設置すると、10年以上の長きにわたって使い続けることになります。
その点、パナソニックは施工やアフターサービスなどできめ細かいサービスを提供することができます。
パナソニックは、18年度に売上高10兆円を掲げます。そのうち、住宅関連は売上高2兆円を目指しています。
太陽電池の生産体制強化に向けた設備投資は、綿密かつ確実な計画のうえで決断されたことは間違いないですね。