キヤノンは、デジタルカメラの生産を完全自動化すると発表しました。
18年をメドに一部モデルを完全自動化する計画で、実現すれば、15人から20人必要な工程が、2~3人で済むようになり、コストは2割程度削減できる見込みです。
一眼レフカメラの基幹工場である大分キヤノン、小型カメラの長崎キヤノンなど国内4拠点の生産ラインを、順次自動化する計画です。
キヤノンの社長兼会長CEOの御手洗冨士男さんは、95年の社長就任以来、生産改革を進め、国内生産維持、そのための省人化、コストダウンに挑戦してきました。
90年代には、ベルトコンベアーによる従来の「ライン生産」方式に対して、作業員が複数の組み立て工程を受け持つ「セル生産」方式の導入を進めました。生産効率を高める、「プロセス・イノベーション」です。
しかし、「セル生産」は、中国や東南アジアなどの企業にキャッチアップされました。00年代半ばには、独自開発の製造装置を使って、人の手と機械を組み合わせ、人手を従来の半分に減らした「マシンセル生産方式」を行いました。
そして、次に目ざしたのが「無人化」すなわち「完全自動化」です。
私は、何度か御手洗さんにインタビューしましたが、05年にお会いした際、「無人化」構想を聞きました。すでに、次のように語っていました。
「セル方式はマスターした。その次は、やはり、自動化だと思うんですね。自動化による少人化、ロボットを交えた少人化による品質確保とコストダウン。もちろん、ものによっては無人化を頭に入れています」
キヤノンは、人件費を極限まで削減し、生産コストを抑えた「無人化」ラインをめざし、川崎市に広大な敷地を購入して生産技術本部を置き、ずっと研究を進めてきたわけですね。
キヤノンのデジカメ生産の「無人化」は、12年に「15年をめど」と報道されたこともありましたが、これまで実現していませんでした。それだけ、課題が多かったのでしょうね。
今回、大分キヤノンは、関連する研究開発を担う「総合技術棟」を、大分県国東市に新設します。10年を超える長きにわたって挑戦を続けてきた、キヤノンの“完全自動化”工場は、実現に向かって、いよいよ動き始めたというわけですね。
息の長い挑戦は、まだまだ続きますね。