ソニーは、最近、いい意味で変わり始めた気がします。
その例を、いくつか挙げてみたいと思います。
今日、グーグルは、日本で定額音楽配信の「グーグルプレー・ミュージック」のサービスを始めました。月額980円で3500万曲以上が聞き放題です。これに、ソニー・ミュージックエンタテインメントも、楽曲を提供します。
ソニーといえば、ウォークマンで一時代を築きながら、90年代後半以降、アップルのiPodにお株を奪われた“負け組”でした。iPod人気が爆発しても、ソニーは、ソニー・ミュージックの楽曲をiTunesに提供することを拒み続けました。ウォークマン公式ミュージックストアと競合するためです。ソニーが、国内でiTunes向けに楽曲提供を始めたのは、12年11月です。
その後、いまや音楽は、ストリーミング型の時代です。ソニーは、独自の定額制音楽配信サービスのミュージック・アンリミテッドを提供していましたが、今年3月に同サービスを打ち切りました。それに代わって、グーグルに楽曲を提供する。
「自前主義」にこだわっていたころのソニーでは、考えられなかったことです。
音楽だけではありません。ソニーが開発したスマートウオッチ「wena」も、おもしろい。時計本体はシチズン時計から調達し、ベルトに、ソニーの技術である加速度センサーやバッテリー、ブルートゥース、フェリカなどが内臓されています。
そして、iOSに対応し、ブルートゥースでiPhoneとつないで使う。
かつてのソニーなら、Xperia限定だったところですよね。
ほかにも、気付いたことがあります。
私は、ソニーの電子書籍リーダーを使っているのですが、昨年ごろから徐々に、使い勝手がよくなっています。リーダーを購入した当初は、買った電子書籍は専用端末でしか読めませんでしたが、近頃では、iPhoneやiPadから電子書籍を簡単に購入し、そのまま読むことができます。
8月には、ソニーモバイルコミュニケーションズと、自動運転技術などを手掛けるZMPが組んで、ドローンを手掛ける合弁会社「エアロセンス」を立ち上げました。
「自前技術」にこだわる時代は、終わりました。デジタル化、ネットワーク化が進み、組み込みソフトを含め、すべての開発を自社で手掛けていては、ビジネスが成り立たない時代です。求められるのは、オープンソースの活用と同時に、他社と組んで新しいものを生み出すこと、すなわちオープンイノベーションです。
2010年前後から、ソニーの取材で、「オープンイノベーション」の必要性を聞くようになりました。しかし、実際に、開発の現場でオープンイノベーションが進んでいる印象を受けませんでした。
「ソニー」のブランドに神通力があった時代は、とっくに去りました。ソニーは、ブランドにあぐらをかいている場合ではなくなったと、ようやく「自己認識」したのかもしれません。ここにきて、ようやくソニーが変わってきたように思います。