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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝は臨時株主総会で再出発なるか

不適切な会計処理で歴代3人の社長が辞任した東芝は、9月30日、千葉市の幕張メッセで異例の2度目の株主総会を開きました。「投資家の信頼を裏切り、市場に混乱を招いたことを深くお詫びします」と述べた室町正志社長に対して、株主からは、厳しい質問が相次ぎました。

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総会は、午前10時から始まり、会計処理の概要説明のあと、取締役の半数以上を入れ替える新たな経営体制の議案が提案されました。11人の取締役のうち、社外の取締役は7人です。東芝は、この新体制をもって不適切会計処理の信頼回復に向けて再出発することになります。

会社側の報告のあと、株主から出た質問とその回答のいくつかを整理して簡潔に紹介してみましょう。
株主「今回の問題は、歴代社長による粉飾ではないのか」
東芝「過年度に修正すべき点があった。しかし、粉飾ではない」
株主「歴代3人の社長は辞任だけで済むのか、どう責任をとるのか」
東芝「歴代社長の3人は、7月21日に辞任している」
株主「辞任した3人はいまも東芝にきていると聞くが」
東芝「3人は、業務の引き継ぎやヒアリングなどで来社していたが、現在は来社していない。社用車を使用したのは安全確保のためだ。個室はない」
株主「ウェスチングハウスののれん償却については」
東芝「米国会計基準にのっとって、毎年減損テストをしている。会計監査も受けている。のれんが帳簿を上回ることから減損は不要である」
株主「ウェスチングハウスの買収は失敗だったのではないか」
東芝「燃料とサービスで安定して収益を上げている」
株主「会計監査人を変えることは考えないのか」
東芝「解任の根拠はない。逆に交代による混乱も考えられる」
株主「土光氏に学ぶ必要があるのではないか」
東芝「土光社長は大変な偉人だった。普段着で現場にいくなど、尊敬している」
株主「監査委員会の状況は」
東芝「176期の監査委員会の開催頻度は年間70~80回。毎回2時間程度だ」
株主「テレビCMは続けるのか」
東芝「非難の可能性はあると考えているが、従業員に責任はない。グループとして東芝が正常に戻るためにも営業活動は続けていく」
株主「なぜ、今回、会場を都内から遠い幕張メッセにしたのか」
東芝「遠い場所で開催したことはお詫びする。例年開催している国技館は秋場所があり、中2日では設営できなかった」
株主「土光さんと石坂さんの墓に土下座しろ。はずかしいことだ」
東芝「厳しい指摘をいただいた。風土の改革を全力で進め、信頼回復に努力していく」
株主「株価が300円を切った。日立やソニーはPC事業などを切り離すなどしているが」
東芝「ご迷惑、ご心配をおかけしていることを心からお詫び申し上げる。株価を回復するには業務の立て直しをしなければいけない。ガバナンス、組織風土の立て直しも、ステークホルダーの納得する枠組みをつくり、“魂”を入れていく」
株主「現在の監査人を使い続けるのか。不正を見つけられなかったのは能力がなかったからではないか。あるいはだましやすいからということか」
東芝「将来にも渡ってとはいっていない」
株主「140年の企業存続の意味をどう考えているのか。伊那食品工業の『年輪経営』という本を役員に読ませたらどうか」
東芝「2人の創業者のDNAをつなげてきた。ご意見を意識改革につなげていきたい」

総会では、1924人の株主が出席し、23人の株主が質問に立ちました。最後に経営体制など会社側が提案した議案の採決が行われ、賛成多数で承認され、3時間50分に及ぶ株主総会は幕を閉じました。

株主からはさまざまな意見が出ましたが、その声に応えるのはこれからです。今日の株主総会はまだ、出発点にもなっていません。一刻も早く、再建計画を発表し、本来の東芝の姿を取り戻すことが求められます。

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