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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

新型「プリウス」に込められた特別な意味

新型「プリウス」は、トヨタ社長の豊田章男さんが進めてきた「もっといいクルマづくり」の第一弾です。いったい、何が変わったのでしょうか。
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初代「プリウス」が誕生したのは1997年です。発表当初、28.0km/ℓだった燃費は、3代目で32.6km/ℓを実現。「プリウス」は、エコカーの代名詞となりました。ところが、環境性能の進化とは裏腹に、残念ながら、車本来の走りの楽しさ、乗り心地、静かさ、かっこよさは置き去りにされてきたんですね。

だから、現行「プリウス」には、どこか優等生を思わせる、まじめだけれども、面白味がない印象がぬぐえませんでした。例えていえば、体にいいからという理由で、健康食を我慢して食べているといったところですかねえ。

それでも、「プリウス」は売れました。エコな車なんだから……というので、内装のプアさも許されるところがあったと思います。

ところが、エコだからといって我慢をする時代はとうに終わりました。エコカーに燃費と環境は当たり前。走って楽しく、かっこよくなければ買ってもらえません。

しかも、HV、PHV、FCVに加えて、クリーンディーゼルエンジン、ダウンサイジングターボもエコカーの仲間入りをしている。エコカーの選択肢が増えるなか、絶対に「プリウス」でなきゃという強い訴求力がなければ、ライバルに勝てませんね。

富士スピードウェイで開かれた試乗会で、新型「プリウス」に乗りました。現行車と乗り比べると、その違いは明らかでしたね。
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新型「プリウス」はなぜ、変わったのか。TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の思想に基づいて、車づくりを徹底的に変えたからです。例えば、全高が20mm下がったのをはじめ、ヒップポイントの位置、シートとのフィッティング、ステアリングの配置など、ドライビングポジションも徹底的に見直されています。一見して、「プリウス」の腰は下がり、安定感が感じられます。落ち着いた印象といったらいいでしょうかね。

「前席乗員着座位置を59ミリ下げ、ステアリングやペダル類の配置を最適化したことから、疲れにくく、運転操作しやすいドライビングポジションを実現しているんですね」
というのは、トヨタ自動車製品企画本部チーフエンジニアの豊島浩二さんのコメントです。 

ちなみに、モーターや電池の性能向上により、一部グレードで燃費40km/ℓを実現し、環境性能も上がっています。

新型「プリウス」の運転席に座ると、高級感が増したというか、ワンランク上のクルマに仕上がったと感じました。私は、かねてから現行「プリウス」の内装のプアさを批判してきましたが、ずいぶんよくなったと思いました。

走りは驚くほど滑らかで、ソフトです。サスペンションも一変されているので、これまでの固い乗り心地がずいぶん改善されて、これまた柔らかくてソフトな印象でした。

例えば、路面に埋められた側溝を通過するとき、現行車は“ガタン”ときて、明らかに段差が意識されました。新型車は、その“ガタン”がない。“カタッ”という程度でショックが少ないんですね。

「トヨタがもっといい車をつくるためには、新しいやり方にチャレンジしなければならない。その第一弾として、新型『プリウス』では、TNGAと呼ぶ、これまでとはまったく違う車づくりを進めてきました」と、豊田章男さんは、東京モーターショーで語りました。
確かに、「プリウス」は変わりました。いってみれば、“気合い”が入っていますよね。

新型「プリウス」は、まず12月に日本で発売され、2016年初めからは米国など約80の国や地域で販売が予定されています。

「トヨタ車を選んでもらった、すべてのお客さまに笑顔になってもらいたい」というのは、豊田章男さんが2011年3月9日に開かれた「グローバルビジョン」説明会で語った言葉です。

新型「プリウス」はまさしく、豊田章男氏が社長就任後、あたためてきた構想を具現化した車といっていいのではないでしょうかね。

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