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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝問題はいまだ、闇の中

東芝は11月27日、原発事業などについて説明する記者会見を開きました。果たして、かねてから指摘されてきた疑問点は、解消できたのでしょうか。

東芝は、累計2248億円もの利益水増し問題で、歴代3社長が引責辞任するなど、未曽有の危機に瀕しています。本丸とされるのが、06年に買収した原子力事業会社ウェスチングハウス(WH)です。

東芝は、米国会計基準にのっとり、買収時に見積もった「のれん」を減損せず、不適切会計発覚後も、原子力事業全体では燃料やメンテナンスが好調のため、減損の必要なしと説明してきました。

のれん代は、当初の計画通り利益を上げられなければ、減損の必要が生じます。買収当時、原子力事業の収益の根拠は十分にあったんですね。

ところが、計画通りにはいかなかった。11年の東日本大震災で原発市場は世界的に冷え込み、現在、東芝とWHは原発の新規受注ゼロの状態が続いています。

WHののれんの減損は、2012~13年度で計1156億円にのぼりました。東芝はWHが計上した減損損失を本体の連結決算に反映せず、東京証券取引所から開示義務違反と指摘されました。

「適時適切に情報開示すべきだったと、大いに反省しています」
記者会見の冒頭、社長の室町正志さんは謝罪の言葉を述べ、これまで何度も行ってきたように深々と頭を下げました。
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ただし、「大いに反省」したのは、WHの減損損失について積極的な開示をすべきだったということだけで、なぜ、WHの減損を連結決算に反映しなかったかについては明らかにしていません。なぜ、連結決算に反映できないのか。ここに東芝問題の根っこが隠されていると見ていいでしょうね。

「日本では原発に批判的ですが、海外ではニーズが高く、評価されています。また、廃炉は大きなビジネスになると考えています」
と、副社長の志賀重範さんは語りました。

東芝がこの日、「電力・社会インフラ事業グループ主要案件に関するご説明」と題して、説明会を開いたのは、この期に及んでなお、原発事業全体では業績は堅調と説明したかったからにほかなりません。ただし、強気の見通しを示されれば示されるほど、ウラに何かあるのではという疑いは強くなるばかりです。

また、原発の新規建設については、「世界で400基以上ある原発の建設計画のうち、計64基の受注を目指す」という計画が発表されました。原発市場が冷え込むなか、これはとてつもなく大きな数字です。

思い起こしてみれば、西田厚聡社長の後任として、09年6月に社長に就いた佐々木則夫氏は、当時、「15年までに全世界で39基の受注を見込む」と青写真を描いて見せました。この数字にも、驚きましたが、まだ、東日本大震災の前でしたからね。

今回、掲げられた64基は、それをさらに上回るわけです。64基の受注がありえるのかどうかはともかくとして、それ以前に、それだけの大風呂敷を広げなければならないというところに、東芝の財務状況の悪化が示されているという見方も可能ですね。

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