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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

東芝は再び漂流か

東芝は21日、テレビや白物家電といったライフスタイル部門の早期退職や配置転換を含めた構造改革策を発表しました。果たして、再生に向けた一歩になるのか。はたまた、東芝の漂流はまだまだ続くのか。

東芝は、2016年3月期の連結業績予想を発表し、連結最終損益が5500億円の赤字になると明らかにしました。これは過去最悪の赤字額です。

課題事業の構造改革や資産価値の見直しなどの必要な措置を2015年度中に実施して、強靭な企業体質への転換を図るのが、東芝の描く再生プランのようです。

2016年3月末までを目途にライフスタイル(家電)部門で約6800人の合理化を実施する予定で、すでに発表している半導体部門を含めると、人員削減の規模は1万600人になります。計上される構造改革費用は2600億円の見込みです。

ソニーやパナソニックがとっくに構造改革を終え、成長戦略を打ち出しているのに対して、なぜ、東芝の構造改革は後れたのでしょうか。

「構造改革が後手に回ったことはたいへん申し訳なく思っております」
社長の室町正志さんは、記者会見の席上、そのように述べたうえ、次のように語りました。
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「当期利益至上主義に走ったことが原因だと考えております。もう少し早く対策を打っていれば、これほどの大事にはなっていなかったかもしれない。いま、思えば、リーマン・ショック以降に打ちだした戦略が不十分だったのだと思います」

早い話が、歴代社長は、必要とされる構造改革を先送りして、当期利益を上げることしか頭になかった。その意味で、西田、佐々木、田中の歴代社長3氏の責任は重い。万死に値するわけですね。

では、東芝の再建は思惑通りにいくのかどうか。というのは、「新生東芝アクションプラン」の発表があったものの、構造改革後の東芝がどのような姿に生まれ変わるのか。その答えは、まったく浮かび上がってこないのですね。

「エネルギー事業とストレージ事業を今後の注力領域とします」
と、成長戦略を問われ、室町さんは答えました。地球温暖化対策で成長が見込まれる原子力事業の将来性について、例のごとく楽観的に説明しましたが、説得力があったとはいえません。

記者会見を通しての印象ですが、室町さんがいつもの“謝罪口調”で重々しく、成長戦略を語ってみせるところにムリがあるように思いました。

謝罪ならともかく、成長戦略なのですから、もっと、明るく力強く、社員を鼓舞するように説得力をもって語ってしかるべきではないでしょうか。残念ながら、室町さんには“謝罪”のイメージがつきすぎました。

室町さんはもともと、不適切会計問題で田中久雄前社長が辞任したことを受けて緊急登板した経緯があります。「危機を乗り切ったあとは、若い後進に道を譲る」と自ら語っており、まさしく暫定社長ですからね。

果たして、東芝は再生のスタートを切ることができるのか。誰が構造改革後の「新生東芝」をひっぱっていくのか。まだまだ課題は山積みです。依然として、先は見えません。

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