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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

好調トヨタに死角はないのか

トヨタの業績は依然、好調です。しかし、手放しで喜べる状況ではありません。“死角”があるからです。

トヨタ自動車は5日、2015年4~12月期決算(米国会計基準)で純利益が前年同期比9%増の1兆8860億円になったと発表しました。

4~12月期として過去最高を更新した背景には、北米での大型車販売の好調があります。

北米では、ガソリン安のほか、雇用や住宅市場の改善、低金利など、新車販売に追い風が吹いています。とりわけ、ガソリン安が大型ピックアップ車や大型SUVの販売を後押ししているんですね。

「北米市場は安定的に推移すると見ています」
と、常務役員の大竹哲也さんは記者会見の席上、語りました。
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同時に発表した16年3月期通期の連結最終利益見通しは、従来予想より200億円多い2兆2700億円で過去最高を見込んでいます。加えて、16年3月期通期のグループ総販売台数も、従来予想より5万台増の1005万台に上方修正しました。

通期の純利益が過去最高を見込むなど、一見、トヨタの業績は絶好調にも見えますが、油断はできません。直近の10~12月期を見ると、営業利益は前年より約400億円少ない7222億円と減益だからです。

背景には、円安にブレーキがかかったことがあげられますね。また、北米以外の地域では販売台数が減っています。さらに、トヨタの新しい車づくり「TNGA」に合わせた設備更新、AI(人工知能)など先端分野の研究開発費もコスト増の要因になっています。

また、「カローラ」「レビン」「ハイランダー」の販売が好調な中国は、15年通年の新車販売台数が前年比8.7%増の112万2500台と過去最高を記録しましたが、インドネシアやタイなど、そのほかの新興国は厳しい状況です。

それから、決算にはおり込まれませんでしたが、愛知製鋼の爆発事故で部品供給が滞り、8日から13日まで国内すべての組立工場の稼働を停止することの影響も、今後、見ていかなければならないでしょう。

とりわけ、トヨタの“死角”は、相変わらず、小型車分野が弱いことです。トヨタは29日、ダイハツ工業を8月1日付けで完全子会社化することを発表、ダイハツに新興国で主力となる小型車開発を委ねる計画ですが、成果が出るまでには時間がかかります。

こうした状況を業績の陰りと見るのか、それとも将来に向けた仕込みの時期と見るか。いずれにしてもトヨタの底力が試されているのは間違いないでしょうね。

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