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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタはロボットをモノにできるか

さすがトヨタの動きは、先手先手をいっていますよね。
それは、AI研究を加速させるというものですよね。

トヨタは、米グーグルのもつロボット事業の子会社、米ボストン・ダイナミクスとシャフトを買収する方向で交渉中だといわれています。自動運転技術への応用も考えられるといいます。
トヨタは先週、配車サービス会社のウーバーへの出資が話題になったばかりですよね。先日このブログで触れた、日産のカルソニックカンセイ売却にしても、自動車各社は、ハードからソフトへと、投資を振り分ける先を変化させつつあるといえます。

今回の交渉は、トヨタが今年1月に米国に設立した人工知能(AI)開発の子会社であるトヨタリサーチインスティチュート(TRI)と、そのCEOに就任したギル・プラット氏なしには、あり得ません。

というのは、トヨタが買収交渉中の2社は、いずれも米国防総省高等研究計画局(DARPA)とのつながりがあります。ボストン・ダイナミクスはDARPAの支援を受けていますし、シャフトは、13年12月のDARPAロボティクス・チャレンジで圧倒的な強さで優勝し、注目を浴びました。

TRIのCEOギル・プラット氏は、もともと鉄人28号に憧れたマサチューセッツ工科大学(MIT)教授ですが、その後、DARPAでロボティクス・チャレンジのプログラム・マネージャーを務めた人物です。つまり、2社とつながっていた。
トヨタは、TRI設立当初から、いや、ギル・プラット氏の招聘を決めた時点から、2社の買収を視野に入れていたのではないでしょうかね。

シャフトについていえば、12年に東京大学助教出身者2人を含む3人が設立した日本発のベンチャー企業でした。人型ロボットの研究開発を手掛け、2足歩行ロボットで画期的な技術を開発していました。設立当初、やはりDARPAの補助金を受けています。
画期的技術をもつにもかかわらず、日本のファンドや企業からは出資してくれるところが見つからず、13年にグーグルの出資を受けて傘下に入った経緯があります。

当時、なぜ、日本発の先端技術に誰も出資しなかったのか。米企業に買われてしまったのかと、問題視されましたよね。

DARPAロボティクス・チャレンジについていえば、福島第一原発事故の反省からスタートしました。ギル・プラット氏は11年、福島原発事故の際、米国からのロボット派遣に協力しています。しかし、結果的に水素爆発を防ぐことはできす、その反省から、災害の被害軽減のために人のパートナーとなりうるロボット開発に取り組み、DARPAでロボティクス・チャレンジを始めたんですね。

シャフトも、福島原発事故も、日本の話ですが、お金を出していたのは米国だった。
今回トヨタが買収すれば、筋が通るというか、当然のことにも思えます。
蛇足ではありますが、ホンダが自力でASIMOの開発に取り組むのとは正反対という見方もできますね。

ただ、ロボットをモノにするのは、簡単なことではありません。
グーグルがロボットの子会社を手放す背景には、収益化のメドが立たないために株主からの圧力があるともいわれます。
トヨタは05年以降、ロボット事業に取り組んできましたが、今後、収益化はいったいいつになるのか。

ロボットをモノにすることは、長期的視点をもった経営と、イノベーションを起こす風土の両方を持ち合わせていなければ不可能なのは、間違いありません。しかも、自動車メーカーとは毛色の違う人材を使いこなさなければいけない。ASIMOだって、収益化はまったく見えていません。
いずれにせよ、トヨタの力量が問われます。

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