パナソニックは3日、次世代閉鎖型牛舎システムの本格導入を発表しました。これはどういうことなんでしょうかね。
「パナソニックがなぜ畜産業界に? と思われる方が多いと思いますが、じつは約40年前から、畜産用の換気扇を国内に約40万台以上納めてきている実績があります。換気扇を売るだけでなく、畜産ソリューションに向けて展開していくという形になってきました」
そう説明したのは、パナソニック環境エンジニアリング、アグリ・建築ソリューションエンジニアリンングユニット主事の森田一弘さんです。
パナソニックは、宇都宮大学などとのコンソーシアムに参加して、2014年~15年に次世代閉鎖型牛舎システムの実証実験を行いました。今後、いよいよ本格導入するといいます。
※次世代閉鎖型牛舎の内部
従来の牛舎は、柱と屋根からなる「開放型」が一般的です。換気は天井の換気扇で行いますが、それだけでは間に合わない。夏の暑さやアンモニアなどによって、牛にストレスがたまる結果、夏場の乳量が10%以上低下する。
安定生産ができなくなることに加え、受胎率か低下して種付け回数が増える。これらの改善には、牛舎の環境を整え、牛のストレスを低減することが求められます。まあ、牛も人間と同様、夏バテ防止策が必要ということなんですね。
次世代閉鎖型牛舎システムは、壁で囲まれた「閉鎖型」です。
シミュレーションによって、事前に換気扇の最適な配置を割り出し、左右の壁にそれぞれプッシュ型、プル型の換気扇が設置されていて、牛舎全体をむらなく換気できるそうです。
また、牛舎内は換気扇によって毎秒2メートル以上の風を吹かせることができ、牛の体感温度を下げることができるそうです。
新型の牛舎内には、温度、湿度、風向、風速などを検知するセンサーが設置されています。これらの数値をもとに、換気扇の強さなどは基本的に自動制御されています。牛舎内の環境を維持しているんですね。
管理室には制御盤が設置され、センサーの検知した値や牛のストレス度が“見える化”されていましたね。
※管理室に設置された制御盤
※管理室の様子
「閉鎖型」牛舎に入った瞬間、開放型と比べて風があって涼しく、気のせいか牛たちもリラックスした様子でした。実証実験では、7月から10月の夏場の搾乳量は、開放型と比較して1日7kg多かったそうです。
パナソニックは、今後、鶏舎や豚舎にも応用していく方針といいます。
畜産関連事業は、2015年の20億円から、18年には40億円に倍増を目指す。
単品のモノから、ソフトも含めたトータルソリューションへという流れは、あらゆる分野に広がっています。畜産も例外ではないということですね。