Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

日本企業のコーポレートガバナンスは変わるか

このところ、企業の世襲騒動が多いですね。

皮切りは、昨年の大塚家具でした。創業者の大塚勝久会長と長女の久美子社長の親子対立があり、昨年3月の株主総会の結果、久美子社長が支持され、勝久氏は会長を退任した。

さらに、今年4月には、セブン&アイホールディングスで長年トップに君臨していた小売りのカリスマ鈴木敏文会長が、7期連続最高益を出していた社長を降ろそうとして失敗、辞任。5月の株総で正式に引退しました。
本人は否定していますが、息子を後継者にしようとしていたという話もあって、世襲騒動の一面は否定できませんよね。

セコムも世襲騒動です。創業者の飯田亮最高顧問は、今年3月、社外取締役を含む「指名報酬委員会」を設置し、そこで、4期連続で過去最高益を出していた会長と社長の解職を決めました。
そのうえ、飯田氏の娘婿にあたる小関一郎氏を取締役に抜擢。外部からは、人事を決める過程が「不透明」という指摘もありましたが、24日の株総で、この人事は承認されました。

まだありますよね。大戸屋ホールディングスです。
実質的創業者の三森久実さんが昨夏、急逝し、その妻と長男の智仁氏が株式を相続して、18%超をもつ大株主になりました。智仁氏は、久実氏が亡くなる以前、26歳と若くして常務になりましたが、昨年、ヒラの取締役となり、今年2月にはその職を自ら辞任しました。
12年から社長を務める窪田健一さんは、今回、新しい経営陣への刷新を打ち出した。創業家はこの人事に反対していましたが、24日の株総では、新経営陣が承認されました。

このほか、サンリオの例があります。サンリオは、創業者の辻信太朗氏がいまなお社長を務めています。息子の邦彦副社長が後継者として既定路線でしたが、13年に急逝。今月23日の株主総会では、次期社長の有力候補とされていた、常務の鳩山玲人さんが退任し、創業者の孫にあたる辻朋邦さんが、27歳にして取締役に昇格しました。

世襲騒動が次々と出てきたことは、コーポレートガバナンスへの関心が高まってきたことと無縁ではないでしょうね。
政府は、コーポレートガバナンスの強化を掲げ、14年2月にスチュワードシップ・コードを策定。さらに、昨年6月、日本証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを導入しました。社外取締役を複数人選任する、しない場合はその理由を説明するなどのルールが決められた。
これらのコードが直接機能したかどうかは別として、企業のガバナンスに対する関心が高まり、経営に、より透明性が求められるようになったことは確かですね。

私は、必ずしも世襲に反対ではありません。
大塚家具は、久美子社長が株主の理解を得たことで、世襲が進みました。セコムやサンリオは、将来の世襲を見込んだ人事に、株主は反対しませんでした。逆に、セブン&アイや大戸屋のケースは、株主の理解を得られず世襲に失敗しました。

徐々にではありますが、日本のコーポレートガバナンスは、コードの導入後、代わりつつあるといえるのではないでしょうかね。まあ、世襲には、よい世襲と悪い世襲があると思います。ケースバイケースで見るしかないのではないでしょうか。

ページトップへ