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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

ルノー・日産アライアンスの効果は?

果たして、収益力は高まっているのでしょうか。ルノー・日産アライアンスの成否が問われています。ルノー・日産は7月4日、アライアンスによるシナジーに関するラウンドテーブルを行い、その成果を発表しました。

※ルノー・日産のアライアンスSVPのArnaud Deboeuf(アルノー・ドゥブフ)さん

※ルノー・日産のアライアンスSVPのArnaud Deboeuf(アルノー・ドゥブフ)さん

ルノー・日産アライアンスは、展開地域をグローバルに広げ、販売台数を増加させてきました。2013年にはグローバル市場占有率約10%、2015年には販売台数830万台を達成し、トヨタ、GM、フォルクス・ワーゲンに次ぐ、世界第4位の自動車グループになりました。

そして、この5月、三菱自動車を日産の傘下におさめ、いまや3強の一角にのしあがりました。

ルノー・日産アライアンスは、購買、開発、生産分野の貢献のほか、「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」と相互生産により、2012年度に26.9億ユーロ、2013年度に29億ユーロ、2014年度に38億ユーロ、2015年度に43ユーロのシナジー効果をあげてきました。

ゴーン氏は2014年4月、アライアンスのテコ入れに踏み切り、日産とルノーとの「研究・開発」、「生産技術・物流」、「購買」、「人事」の“4機能統合”を図りました。

両社は別々の会社ながら、4機能は両社の副社長が統括し、これまでの業務提携から業務統合へと一歩進んだアライアンスへと移行したんですね。「アライアンス・マネジメント・コミッティ」の議長には、ゴーン氏が就任しました。

2016年3月には、“4機能統合”のさらなる強化を進めました。より緊密な連携を図ることにより、2018年に年間55億ユーロのコスト削減効果を上げる目標が掲げられました。

「アライアンスによって、購買、開発、工場、部品を共有できます。一つのラインで二種類の車をつくることができます。顧客の目に触れないところは共有化し、2つの異なるモデルを売ることができるんですね」
パリからテレビ会議で出席した、アライアンスSVPのアルノー・ドゥブフ氏は、そう説明しました。

たしかに、展開地域のグローバルな拡大、販売台数の増加など、アライアンスは、規模の拡大には効果を上げていますよね。

ただ、問題は収益ではないでしょうか。

リーマン・ショックの煽りから、日産の営業利益率は、08年度以降、低空飛行を続け、ルノーも赤字と黒字の間を行ったり来たりの状態。さらなる取り組みが必要とされています。

シナジー効果はさることながら、4つの機能の統合は、うまくいっているのか。課題はないのか。

「マネジメントというのは、そう簡単ではありません」
ドゥブフ氏は、語りました。

「副社長、生産担当、開発担当の人たちは、半分は日本で半分はフランスで時間を過ごします。ずいぶん、疲れます。出張時間もとられます。それでも、共通のマネジメント上で、担当の副社長が、両社を責任をもって見ていることが大事なんです」

それから、両社で車台(プラットホーム)を共有化する、モジュール・アーキテクチャー「CMF」(コモン・モジュール・ファミリー)は、順調に進んでいるのか。

「CMFは共通のチームでやらなければいけません。大切なのは、日本とフランスの間できちんとコミュニケーションできているかどうか。場合によっては、権限移譲も大事です。また、無用に別のチームをつくることがないようにしなければいけません」
ドゥブフ氏は、コメントしました。

アライアンスの結果、多くのメリットが生まれているのは確かなようですが、収益増加につなげるまでには、まだまだ取り組むべき問題があるということでしょう。

もっとも、「国際的な環境で仕事をする人が増えました。これは、大きなメリットです。経験によって才能を引き出すことになるからです。若い人材が育つことにもつながっています」と、ドゥブフ氏は語りました。確かに、これは大きな財産でしょうね。

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