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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

“自動運転”車はまだ始まったばかり

自動運転に関するニュースが続いています。

ディー・エヌ・エー(DeNA)は、無人運転バスを使った交通サービス「ロボットシャトル」を、8月から運用すると発表しました。
無人運転ということは、もちろん、自動運転です。
といっても、公道ではありません。私有地内です。イオンモールと提携し、千葉県のイオンモール幕張新都心に隣接する豊砂公園の敷地内で運用するといいます。

「ロボットシャトル」の車体は、仏イージーマイルが開発した自動運転バス「EZ10」を利用します。着席、立席6人ずつの12人乗りで、運転席はなく、車両の前後もない。カメラやセンサーを搭載し、人や障害物など危険を検知すると減速、停車します。この点は、自動車メーカー各社が行っている自動運転技術と似ていますよね。

DeNAは、当面は私有地や私道での運用を考えているようです。大学の構内や公園、公共施設、テーマパーク、工場などが考えられます。走行コースが決まっており、公道のようにスピードを出す必要がないため、深刻な事故につながりにくいんですね。
同じコースを走る無人運転という意味では、新交通「ゆりかもめ」の後輩みたいな存在といえなくもない。

限られた範囲内での「無人運転」すなわち「自動運転」が成功し、一般人に受け入れられ、信頼されたならば、公道での自動運転も、受け入れられやすくなるかもしれません。公道においては、たぶん、だいぶ先のことになるでしょうが、バスやトラック、タクシー、商用車による運用が先行する可能性はあるのではないでしょうかね。

さて、自動運転といえば、先日米テスラ「モデルS」のオートパイロット機能使用中の死亡事故が問題になりましたが、また、テスラ車のオートパイロット中に事故が起きた可能性があるといいます。今度は「モデルX」です。
幸い運転者の命に別状はありませんが、こうした事故が続けば、自動運転に対する世間の懐疑心が強くなり、風当りが強くなるのは間違いありません。
以前も書きましたが、自動運転車による深刻な事故を恐れ、多くの自動車メーカーは、公道での導入に慎重になっているのです。

自動運転といえば、もう一つ、ホンダが自動運転技術を開発するために新しいテストコースの運用を始めたといいます。F1など四輪モータースポーツを開発する「HRD Sakura」の敷地内に、東京ドーム4.5個分に相当する面積の市街地型テストコースをつくった。

じつは、ホンダは、ASIMOやホンダジェットを生んだ1986年発足の基礎技術研究センター(基礎研)で、自動運転についてひそかに研究をスタートさせています。基礎研の生みの親の元ホンダ社長、川本信彦さんから、自動運転開発初期のエピソードを聞いたことがあります。

――いまだからいってもいいのかな。90年代後半に、関越道で夜中にテスト走行をしていましたよ。当時は、コンピュータがデカかったから、発電機は積むところがなくて屋根の上。それで、運転がとろいから、ピッとハンドルをきったんだわ。そしたら、うちの発電機は、横揺れに耐えるようにできてなかったもんだから、油が回らなくなって止まっちゃって、コンピュータが暴れ出した。隣に乗ってた人は、びっくりしてひっくり返っちゃった。僕はステアリングを握ってたから、押さえたけどね――

もっとも、この後、ホンダの自動運転の開発は、いったん途切れたと聞いています。

現在、自動運転技術において、ホンダは、日産やトヨタにやや遅れをとったといわれています。川本さんにいわせれば、「いまになって『遅れてる』なんて、頭にきて見ちゃいられねぇんだ!」となります。
もっとも、自動運転技術は、日産が一歩リードしているといわれていますが、トヨタやホンダにも、巻き返しのチャンスは、まだ十分あります。

というのは、テスラ車のオートパイロット機能に限らず、国内でも「車間距離制御装置」や「自動ブレーキ」機能の過信による事故は起きています。自動運転導入の機運は高まっているとはいえ、テスラも、国内の自動車メーカーも、まだまだ完全な「自動運転」を導入できる段階ではありません。

つまり、「自動運転」車は、まだ始まったばかりですからね。

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