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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

サントリー山崎蒸溜所④ 多彩な原酒を発酵槽でつくり分ける

ここからは、ウイスキーづくりについて触れてみたいと思います。

ウイスキーづくりの真髄は、「自然との対話」にあります。また、仕込み、発酵、蒸溜、熟成という工程の一つひとつにこだわりがあります。

山崎蒸溜所の工場に足を踏み入れると、ほんのりとウイスキーのあまい香りが漂ってきます。まず、最初は仕込み工程です。

「これが、ウイスキーの原料となる二条大麦です」といって、佐々木さんが手の平にのせて見せてくれたのは、先端がややとがった米粒大の穀粒です。
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この二条大麦を水に浸して、発芽に必要な水分をたっぷりと吸わせ、温度をコントロールしながら発芽させます。これが麦芽です。

麦芽は粉砕機によって粉砕され、仕込み水と混ぜてお粥状態にします。ここで麦芽の中の酵素が働き、麦芽中のデンプンが糖分に変わります。これを濾過して麦汁を抽出するんですね。

ポイントは、前に触れたように、仕込み水です。良質な山崎の水で仕込むことによって、味わいが決定づけられます。

「麦汁は、糖分が14%ほどです。穀物でお酒をつくるときは、このように糖分をつくるところから始めますが、ワインは違います。ブドウに最初から糖分が入っていますから、この工程はいりません」
佐々木さんの説明です。

次に、発酵工程に移ります。高さ4メートルほどの発酵槽に麦汁を入れ、約3日かけて、発酵させます。アルコールをつくりだし、ウイスキーの骨格をつくる大切な工程ですね。

発酵槽は、ステンレスタンクか木桶槽を使います。どちらを使うかは、狙うタイプによって決められます。木桶槽で発酵させると、蒸溜所内に棲みつく自然の乳酸菌などが働き、ウイスキーにより複雑な味わいをもたらしてくれるそうです。

発酵工程は3日間にも及びます。その間、酵母が麦汁中の糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスに変え、ウイスキー特有の香味成分をつくりますが、そのとき猛烈な泡が生じます。
「発酵の最盛期に、桶に顔を突っ込むと、気を失うこともある」と前置きして、佐々木さんは次のようなエピソードを語ってくれました。

「昔、日本酒づくりの担い手である杜氏は、腰に巻いた縄を、後ろで支えてもらいながら、発酵槽をのぞいたそうですが、大変、危険な作業だったそうです。なにしろ、昔は、『杜氏と結婚したら、旦那はいないものと思え』といわれたそうですよ」

以前、サントリー山崎蒸溜所で発酵槽のなかをのぞかせてもらったことがあります。発酵槽のなかで、きれいな白い泡がふつふつと湧いていて、スイッチャーと呼ばれるプロペラがグルグルと回っていましたね。

聞いてみると、泡が桶からあふれ出ないように、スイッチャーで泡を切っているといいます。泡立ち方を見れば、発酵の具合がわかるそうです。

できあがった発酵液は、もろみと呼ばれます。この段階でのアルコール度は約7%です。

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