Loading...

経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

サントリーワールドリサーチセンター③  “内知”を進化させる工夫

研究所に求められるのは、外部との「知の交流」だけではありません。部門間の垣根を超えた対話や共有体験、研究員同士のコミュニケーションなど、いってみれば、内部の知、すなわち“内知”の交流を深めることが、新しい価値の創造につながっていきます。

現在、サントリーワールドリサーチセンターでは、約300人の研究員を含めて、総勢400人が働いています。
dsc072563
どこの研究所でもそうですが、研究員たちは仕事の性質上、どうしても孤立しがちで、一人の時間を過ごすことが多くなりますよね。

また、機密保持の観点から、部署ごと、プロジェクトごとに心理的な壁がつくられ、仕事に必要な情報提供の機会を得にくいといった傾向も見られます。

むろん、専門性の深堀りは大切です。しかし、部門を超えた研究員の連携、すなわち“内知”の交流なくして、未来社会に向けた新しい価値はつくれません。

“内知”の交流のために、パーテーションを取り払う、オープンスペースをつくるなど、オフィス空間をリニューアルする動きが見られます。ただし、それだけでは不十分ですね。

サントリーは新しい研究拠点の設立にあたり、若い研究所員を中心にしたプロジェクトを立ち上げました。

「オフィス設計に研究所員を巻き込んでいったんです。参加型でプロジェクトを進め、自分たちがどういうふうに働き、成果を上げていったらいいかを話し合いました。単なる集約、引っ越しではないということですね」
菅修一さんの話です。

2012年秋、第一期プロジェクトをスタートさせました。第一期プロジェクトでは、何を変えなければいけないについて話し合われました。第二期、第三期プロジェクトでは、専門家を巻き込んで、成果を上げるための具体的なオフィスレイアウトが検討されました。プロジェクトに参加した研究員の数は、総勢75人にのぼったそうです。

一般に、オフィスの設計は、総務部にお任せというケースが多いのですが、サントリーは、研究所の設計プロジェクトに研究員を巻き込んで、主体的に仕事の仕方を変えるきっかけにしたんですね。

菅さんの案内で、サントリーワールドリサーチセンターの内部を見学しました。広々とした階段を2階に上がると、すぐのところにライブラリーコーナーがありました。

多目的室では、約20人の研究所員が講義を聞いていましたね。

赤色と緑色に統一された、小さいながらも雰囲気のある2種類の部屋がありましたね。

スケルトンのエレベーターで3階に上がったところには、フリーアドレスの机が並んでいました。固定席は一つもなく、100%フリーアドレスですだと説明されました。

研究所員は、朝、出社すると、3階にある個人ロッカーに荷物を預けて、好きな席に座ります。そして、「スカイプ・フォー・ビジネス」を使って、自分の居場所をインプットする。他のメンバーの仕事の予定表を閲覧することもできる。最新ICTが、時間や所にとらわれない働き方を支えているんですね。さすが、最新鋭の研究施設ですね。

これからの研究者は、社会と積極的な関わりをもち、世の中にインパクトを与える存在であることが求められます。最新ICTを活用した働き方は、広く社会に開かれた研究スタイルを維持するためにも欠かすことができません。

オープンなコミュニケーションの仕掛けを取り入れた新しい研究施設には、“内知”の深化に向けた、サントリーの強い意思が感じられました。

ページトップへ