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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

トヨタとスズキの提携でホンダはどう動くか

トヨタとスズキの今回の業務提携にまったくサプライズはありませんでした。フォルクスワーゲンとの提携が崩れた段階から、スズキは生き残りがむずかしくなり、頼るとすれば、トヨタしかなかったですからね。豊田家と鈴木家の長い付き合いを考えれば、修さんが章一郎さんにスズキの将来を託すだろうということはかねてからいわれていました。

今回のトヨタとスズキの業務提携に関して、ポイントは2つあると思います。

第一のポイントは、この業務提携が資本提携にまで進展するかどうかですね。

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※握手を交わす豊田章男社長と鈴木修会長

 

記者会見では、その点について豊田章男さん、鈴木修さんの2人とも「ゆっくり考える」とコメントしました。考えていないとはいいませんでした。今後に含みを持たせたと各紙は解説していますが、資本提携までいくかどうかは、この提携の最大のポイントでしょう。

トヨタは、これまでスバルやマツダと提携をしてきました。2005年にスバルと資本提携、15年5月にマツダと業務提携をしています。当時、マツダとの提携が資本提携までいくかどうかが関心事として取り上げられました。

ところが、マツダとは、いまだ資本提携には至っていません。

なぜ資本提携まで進んでいないのか。トヨタがマツダと資本提携まで踏み込んで、いったいメリットがあるのか。これが、資本提携が進んでいない背景じゃないでしょうか。

というのは、何度も触れてきたように、トヨタには生産台数1000万台にふさわしいオペレーション&マネジメントが問われています。事実、これまでに1000万台に対するオペレーション&マネジメントは自動車産業になかったですからね。

章男さんは、記者会見でも「アライアンスが苦手」といっていましたが、マツダやスズキと資本提携をして抱え込む理由があるのかということです。

あるとすれば、スズキ側の事情によるのではないでしょうか。

例えば、スズキの最大の課題である、鈴木修さんの後継者問題があります。スズキとしては、トヨタに少し資本を持ってもらって、スズキの後見人役をトヨタに果たしてもらうという意図があるのではないでしょうか。しかし、繰り返しますが、トヨタがスズキを抱え込むということは当面考えられません。

第二のポイントは、トヨタとスズキの提携とは関係がないようですが、ホンダの動向ですね。今回トヨタとスズキが提携することによって、日本の自動車業界は再編が一気に進み、3つのグループに再編されることになりました。

トヨタ・スバル・マツダのトヨタグループ、日産・ルノー・三菱自動車のグループ。そして、ただひとつ独立系のホンダの3つです。

ホンダは、この再編劇に参加しなかったというか、取り残されたというべきなのか。

グローバルでは現在、トヨタ、GM、ワーゲン、そして三菱自動車を傘下におさめた日産・ルノーの4大グループがあります。そのなかで、販売台数400万台のホンダがどう生き残っていくのか。

例えば、ダイムラーやBMWに象徴されるように、高級車専門メーカーとして生き残る道がありますが、両社は生産台数200万台前後にすぎません。

その中間に位置するホンダが、独立系として我が道をひた走っていけるのかどうか。

現在、これだけ再編が進んでいる背景には、自動運転、安全技術、環境技術などに巨額の開発費がかかるからですね。

トヨタとスズキが提携に向けた検討を行うなかで、ホンダはどうするのか。今後の再編劇を見ていくうえで、これが大きなポイントになるのではないでしょうか。ホンダは、GMとの技術提携にさらに踏み込んでいくのかどうか。

ホンダがこれからどう動くのか。サプライズがあるのかないのか。これが、我が国の自動車業界の次なる関心事といっていいのではないでしょうか。

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