トヨタの豊田章男社長は、開催中のデトロイトモーターショーで、今後5年間に米国に100億ドルを投資すると発表しました。トヨタはトランプ米次期大統領に、名指しされていましたからね。トランプさんの一挙手一投足が気になるのは、自動車メーカーだけではありません。
しかし、足元を見れば、日本経済はトランプさんばかりを気にしているヒマはありませんよね。2017年の日本経済の課題は、「失われた20年」の縮小均衡を脱すること、すなわち、デフレ脱却の方向へ、確かな一歩を進めることができるかどうかです。
少子高齢化、人口減が進むなかで、日本経済再生は待ったなしの状況です。
指摘するまでもなく、日本経済再生のカギを握るのは、企業です。成長の機会を逃さず、“攻めの経営”を貫くことができるかどうかが問われます。
そして、企業の成長戦略の肝は、「蒸気機関」「電力」「コンピュータ」に続く「第4次産業革命」ともいわれるIoT(モノのインターネット)やAI、ビッグデータなどにあります。これらは、農業や漁業、製造業、サービス業まで、幅広い産業に影響を及ぼすだけでなく、「産業革命」という通り、産業構造そのものを変革します。
日本企業は、IoT、AI(人工知能)、ビッグデータ、ロボットなどの新技術に積極的にチャレンジし、世界をリードしていく必要がある。
その点、自動車業界においては、日本の自動車メーカーは、自動運転、衝突安全、環境対応で世界をリードしている。つまり、日本の技術力をもってすれば、「第4次産業革命」をリードしていくことは、必ずしも難しい話ではないといえます。
前回書いた通り、米国、中国、欧州経済にもリスクがあるなかで、日本企業の経営者に問われるのは、挑戦する“覚悟”があるかどうかでしょう。企業が保守的になり、内向きになっている限り、社内は活性化しないし、業績が伸びなければ消費も活発にならない。デフレ脱却は不可能です。
企業が“攻めの経営”に徹することができれば、デフレ脱却に光が見えてくるでしょう。さしあたって、トランプさんの発言を受けて、トヨタが生産拠点を変更するなど、あり得ない話といっていいでしょう。
それだけの覚悟があれば、トランプ次期大統領の政策変更に伴うゴタゴタも、日本経済は十分に乗り切ることができるはずです。