トヨタ自動車など国内外13社は18日、スイス・ダボスで「ハイドロゲン・カウンシル(水素協議会)」を発足させました。その狙いは、どこにあるのでしょうか。
どちらかというとEVの開発に消極的だったトヨタが、2020年までにEV(電気自動車)の量産体制を整え、EV市場に本格参入するというニュースを受けて、にわかにEVをエコカーの本命視する動きが広がっています。
しかし、トヨタがEVの開発、早期の量産を発表したからといって、エコカー開発の方針が大きく転換したかというと、必ずしもそうではありません。
「トヨタにとっての究極のエコカーはFCV」と、トヨタ自動車の伊地知隆彦副社長は、昨年11月8日に行われた2016年度第2四半期決算発表の席上、コメントしました。
FCVは、日本ではトヨタとホンダが市販しています。走行時に二酸化炭素を出さないため、環境負荷が低く、航続距離もEVより長いため、究極のエコカーといわれています。
ところが、FCVは、開発費用が巨額なうえ、燃料となる水素供給施設の普及が遅れているため、本格的な普及はだいぶ先になると見られています。トヨタは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に本格的な弾みがつくと予想しています。
ただ、いくら普及が先のことになるとはいえ、規格の標準化やインフラ整備を進めないわけにはいきません。ましてや、広く政府や産業界に向けた、水素への理解を深める努力を怠るわけにはいかないんですね。
世界の自動車メーカーとエネルギー企業が、「水素協議会」を発足させた理由は、ここにあるといっていいでしょう。
加えて、「水素協議会」を世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開かれているスイス・ダボスで発足させたのも、水素社会の将来的な可能性を世界に向けてアピールする狙いがあったといえるでしょう。
参加するのは、トヨタ自動車、ホンダ、独ダイムラー、BMW、韓国の現代自動車のほか、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、川崎重工業など計13社です。協議会の議長は、トヨタと仏エア・リキードが務めます。
13社は、FCVの開発などに年間計14億ユーロ(約1700億円)を投資しており、今後5年間で計100億ユーロ(約1兆2000億円)を投資する計画です。
「水素とFCVは、社会のエネルギーシステムの中核をなす可能性を秘めています。水素協議会の発足を通じて、製造業、エネルギーの世界的リーディングカンパニーが協力することで、この取り組みが加速されると信じています」
と、ホンダ副社長執行役員の倉石誠司氏は、「水素協議会」で語りました。
水素を将来のエネルギーに移行させるにあたっては、息の長い取り組みが必要です。一社では対応できません。各国の自動車メーカー、エネルギー企業の知見の融合が求められるのはいうまでもありませんよね。