外交の場で、おもてなしに力を注ぐのは、どこの国も同じです。なぜなら、外交に及ぼす影響が決して少なくないからですね。
安倍晋三首相は1月12日、今年最初の外遊先となるフィリピンを訪問し、ドゥテルテ大統領と会談しました。ドゥテルテ大統領との首脳会談は、この半年ですでに三度目です。
ドゥテルテ大統領は12日、マニラで開かれた晩餐会で、「日本は兄弟よりも近い友人。日本は他には類を見ない友人ということだ」と挨拶しました。
さらに、翌13日、安倍首相は昭恵夫人を伴って、フィリピン・ダバオ市内のドゥテルテ大統領の私邸を訪問しました。ドゥテルテ氏の私邸を訪問したのは、外国首脳として初めてです。
ドゥテルテ氏は、自宅寝室に安倍首相を案内するなどして温かく迎えました。
なかでも、ドゥテルテ氏が安倍首相にもち米を使ったフィリピン菓子をふるまったことが話題になりましたよね。
昨年11月にフィリピンを訪れた際、現地で聞いた話ですが、このフィリピン菓子は、「スーマン」と呼ばれ、フィリピン庶民のスナックなんだそうです。すり下ろしたキャッサバにココナッツの果肉を加え、バナナの葉で包んで茹でた素朴なお菓子です。
早朝、フィリピンの市街では、「スーマン」を売り歩く人の姿を目にすることができます。
ドェテルテ氏は、この「スーマン」を安倍首相との歓談の場でふるまいました。あえて庶民の味を供したドェテルテ氏の意図は、どこにあるのでしょうか。
ご存じのように、安倍首相がフィリピンを訪問した意図は、南シナ海をめぐる問題であることは間違いありません。かりにも、日本をめぐる安全保障環境が悪化することになれば、日本の対フィリピン支援には影響が出てきます。
また、トランプ大統領就任後、安倍首相が米比関係のキーパーソンになることは十分に予想できますよね。
ドゥテルテ大統領は、安倍首相と個人的な信頼関係を強化したいと考えたからこそ、親しみをこめた「おもてなし」をしたといっていいでしょうね。
日比関係と南アジア、さらに東アジアをめぐる中国との関係を考えてみると、この「スーマン」の持つ意味は意外と深いですね。