じつは、東芝は「原子力の看板」を下ろしたくても下ろせないのです。
東芝は、1月27日夕に記者会見を行い、原発事業を大幅に見直すことを発表しました。これ以上の損失を回避するためです。巨額損失の穴埋めに向けては、とうとう“虎の子”の半導体事業の分社化を正式決定しました。かつての名門企業はいま、絶体絶命の危機にさらされています。
東芝の綱川智社長は、記者会見の席上、「エネルギー事業で原子力にもっとも注力するという位置づけを変える。今後、海外の事業は見直す」と述べました。
東京電力福島第一原発事故以降、各国の安全規制が強まり、建設コストが高騰しているからです。
「海外での新規の受注は考え直します」
と、綱川社長は、発言しました。
また、今後、設計や原子炉の製造や納入などに専念し、建設工事からの撤退とともに、30年度までの原発45基の受注を見直す方針も明らかにしました。
しかしながら、現実は厳しいものがあります。米国の原子力発電事業では、最大7000億円規模の損失が見込まれています。その穴埋め役となるのが、全社の売上高の3割近くを占める半導体事業です。
東芝は、スマートフォンなどに使われる主力のNAND型フラッシュメモリー事業を分社化することを正式決定し、3月下旬の臨時株主総会で株主の承認を得て、同月末に実施する予定です。
半導体の新会社は、外部から20%未満の出資を得て、2000億円から3000億円を調達、その資金で3月末の債務超過を回避する方針です。
16年の優良事業の医療売却に続くものですね。原発で損失を出すたびに、利益の出ている事業を売却してしのいでいるわけですよ。まあ、売り喰い状態ですね。
なぜ、そこまでして原発事業を抱え続けばければいけないのか。
1月26日のブログでも書きましたが、東芝には福島第一原発の廃炉の責任があるからですね。
綱川社長も次のように語りました。
「原子力の国内事業は、メンテナンス、管理、そして廃炉の事業にしぼります」
じつのところ、東芝を抜きに、原発の維持も廃炉もできないのです。廃炉は、40年以上かかり、溶けて固まった核燃料(燃料デブリ)を取り出すためのロボットの開発など、廃炉作業には東芝の技術力がはずせません。
東芝は、原発事業をエネルギー部門から独立させ、社長直轄の組織にすることを検討しています。意思決定の迅速化やコスト管理の徹底のほか、米原発子会社ウェスチングハウスの統治強化を図る方針です。
東芝は、米原発事業における損失計上額と2016年度業績への影響について、2月14日に公表します。
いよいよ東芝の経営を揺るがす損失の実態が明らかになります。東芝は再建できるのか。最終局面に入りました。