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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

宅配便問題の抜本的解決策はあるか!

ヤマト運輸は、「宅急便」の基本運賃を9月末までに引き上げる方針です。消費増税以外の基本運賃の引き上げは27年ぶりです。個人向けの宅急便の基本運賃に加え、全体の9割を占める、アマゾンなどの大口顧客にも値上げを要請し、運賃体系を抜本的に見直す考えですよね。

ご存じのように、今回のヤマト運輸問題は、ヤマト運輸の労働組合が、「荷受け抑制要求」を行ったことが発端でした。

ヤマト運輸は、個人宅への配送で事業を拡大してきた企業です。しかし、個人宅への配送は、ネット通販の普及によって、想定以上に急増した。国交省によれば、この10年で取扱個数は27%以上増加し、15年度には約37億4493万個。うち、ヤマト運輸は約17億3126万個と約半数を占めます。今年度のヤマト運輸の個数は、18億7000万個に達するだろうといわれています。

取扱個数は増加の一方、値上げはせず、利率は低迷、サービス残業が増えるなど従業員の負担は増加するばかりですね。結果、ドライバーは人手不足。そうなると、他社に委託するケースが増加するので、一方で荷物が増えても収益は減る一方なんですね。まさしく典型的な「豊作貧乏」状態です。

ドライバーもまた、昼休みもとらずに15時間以上働くような有様で、長時間勤務が常態化しています。ついに現場が悲鳴を上げた、という話ですよね。

すでに指摘されている通り、問題の一つが、2割に上る再配達率の高さにあります。入浴中や寝起きといった理由で“居留守”を使うケースも珍しくない。再配達を有料化すれば再配達率は下がるかもしれません。

しかし、例えば、お中元やお歳暮の場合、誰が配達料を支払うのでしょうか。送り主でしょうか、受け取る人でしょうか。簡単な話ではありませんよ。

まあ、かりに再配達有料化、時間帯指定、運賃体系などを見直したとしても、問題の抜本的な解決にはつながらないのではないでしょうか。では、何をするべきか。

例えば、企業は、すでに取り組んでいますが、物流倉庫へのロボット導入やピッキングの自動化、宅配車の自動運転、ドローンなどの技術的な解決策を追求するというのは、当然行われてしかるべきでしょう。しかし、これも時間のかかる話ですよね。

それから、新築のマンションには宅配ボックスを標準装備する。さらに商業ビルでは、例えば地下駐車場に荷捌き場を設けることを定めるのはどうでしょうか。

また、駅周辺に宅配ロッカーを増やすのも必要でしょう。

個人についていえば、クロネコメンバーズ(無料)に入って、受け取る時間などをLINEを通じてやり取りするのも、配達率を向上させるのに有効でしょうね。

もちろん、受け取る人は居留守を使わない、再配達は必ず受け取れる時間を指定する、という程度の常識的な努力も必要でしょう。

それから、国は、現在「1億総活躍社会」と女性の社会進出を推進していますが、みんなが働くようになれば、必然的に荷物を受け取れる時間は限られる。

であるならば、宅配ボックスの設置を促すために、いっそのこと補助金を出すのはどうかとか……。宅配ボックスは、現状、数万円から高価なものでは20万円ほどで、なかなか普及が進みませんが、インセンティブがつけば、多少なりとも普及するかもしれません。

宅配便は、もはや水道やガス、鉄道などと同じ「社会インフラ」です。維持するためには、誰もが努力する必要があるということです。

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