ファーストリテイリング傘下のカジュアル衣料品店「ユニクロ」が、新しい服づくりに乗り出しました。カギは、AI(人工知能)の活用です。
現在、アパレル業界で売り上げを伸ばしている会社のほとんどが、SPA(製造小売り)業態をとるファストファッションといっても過言ではありません。
自らデザインを企画し、生産、販売するSPAは、工場と売り場を最短距離で結んでいるため、無駄なコストを削減でき、販売価格を抑えることが可能です。また、ブランドのコンセプトを一貫してマネジメントすることにより、いち早く消費者ニーズに対応することができますよね。
SPA業態を採用している代表的な企業には、ファーストリテイリング傘下の「ユニクロ」のほか、スペインのインディテックスが展開する「ザラ」、スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツが展開する「H&M」などがあります。
ファーストリテイリングは、SPAモデルで大きく成長を遂げました。しかし、商品づくりのスピードにしても、売上高にしても、世界の競合に追い付いているとはいえません。ファーストリテイリングの年間売上高は現在、1兆7000億円に対して、インディテックスとへネス・アンド・マウリッツはともに2兆円を超えています。
そこで、もう一段の飛躍に向けて、スタートさせたのが、「有明プロジェクト」といわれる改革です。
新有明オフィスには、企画、開発から物流までを担う約1000人のスタッフが1フロアに集い、情報を一元化しています。狙いは、注文から最短10日で消費者に好みの商品を届ける仕組みの構築です。
あらゆるものがインターネットに接続されるIoT(モノのインターネット)が製造現場に取り入れられれば、究極的には一品一様のオーダーメイド商品が大量生産と同じレベルのコストで生産できるようになります。
ユニクロも、AIを活用して、消費者が求めているものをリアルタイムで理解し、求められているものだけをすぐにつくるビジネスモデルを実現しようとしているんですね。
加えて、世界各地のデザインセンター、R&Dセンター、イノベーションセンターをデジタルでつなげ、世界連動でデザインを進めるとともに、生産リードタイムの短縮、物流のスピード化などにも取り組んでいます。
これまで商品企画から販売まで1年かかっていたのを2週間に短縮する計画です。
有明の新オフィスでは、社員の働き方を変えて、全社員が同時に連動して作業を行えるようにする取り組みも進めています。
「企画、デザイン、素材調達、生産、販売までの一貫したサプライチェーンのすべてを変え、“情報製造小売業”へと業態を変革させる」と、柳井正社長はいいます。
ユニクロは、AIによってSPAモデルを進化させられるかどうか。
それは、並みいる競合に勝つための避けては通れない挑戦であると同時に、ファーストリテイリングが掲げる2020年度売上高3兆円、営業利益率15%が達成できるかどうかの試金石ともいえますね。