企業の会計をめぐる不祥事が、依然絶えません。なぜでしょうか。
東芝に続き、富士フイルムホールディングス子会社の富士ゼロックスの不正が、せんだって発覚しました。両社の不正には、共通点があります。
すでに報道されているように、東芝は前期、約1兆円の巨額赤字に陥りましたが、その原因は、米国の原子力事業子会社ウェスチングハウス(WH)が買収したストーン&ウェブスター社の減損です。
東芝は、2006年に、時価の3倍ともいわれる高値掴みでWHを買収しました。しかし、特殊な知識や技術のカタマリである「原子力ムラ」、それも、東芝が手掛けたことのなかった海外の原発事業を手掛けるという事情もあって、WHの経営に対し、親会社の東芝は、口をはさめない状況になっていた。
つまり、東芝本社のトップは、WHとその子会社の経営状態を、把握できないという状況、すなわちガバナンスが完全に欠如していた。
富士フイルムHDと富士ゼロックスのケースはどうか。また、その関係はどうなっているのか。
富士ゼロックスは、富士フイルムHDが75%を出資する子会社ですが、もともと、富士写真フイルム(現・富士フイルムHD)と英ランク・ゼロックス(現・米ゼロックス)が折半出資する合弁会社として、1962年に設立されました。富士ゼロックスのトップは、長年にわたって日本財界の重鎮だった小林陽太郎さんで、独立志向が強かった。
それに、富士ゼロックスは、そもそも長年にわたって孝行息子だったんですね。富士フイルムの事業は、複合機などの事務機を扱う「ドキュメントソリューション部門」、インスタントカメラなどの「イメージングソリューション部門」、さらに液晶パネル向けの素材や医薬品などの「インフォメーションソリューション部門」からなります。
このなかで、稼ぎ頭は、富士ゼロックスが大部分を担う「ドキュメントソリューション部門」なんですね。富士ゼロックスの売上高は、富士フイルムHD全体の約5割を占めています。
稼ぎ頭の富士ゼロックスに対し、富士フイルムHDは、小林陽太郎さんの手腕もあって、経営に口をはさめない状況になっていた。一方、富士ゼロックスも、本社から「不正があるのではないか」といわれても、「大きな問題ではない」というばかりだった。つまり、富士フイルムHDは正しい報告がされていなかったし、遠慮からか求めなかった。
つまるところ、東芝と同様、子会社に対するガバナンスの欠如です。
東芝や富士フイルムに限らず、過去にはオリンパスでも不正会計事件がありました。直近では、リコーが、2012年3月期に米子会社の特別損失1078億円を適時開示していなかったとして、今月22日に報告しました。
いずれも、「コーポレートガバナンスの欠如」です。
汚職や犯罪を完全に撲滅するのが難しいのと同様、「コーポレートガバナンス」を完全に機能させ、企業の不正を撲滅するのも、簡単なことではありません。社外取締役を機能させるなど、絶えず努力を続けるしかありませんね。