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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

タカタ破綻の原因はどこにあるか

昨日、タカタは民事再生法の適用を申請し、経営破綻しました。そもそも、タカタ問題とは何だったか。

タカタは、エアバッグやシートベルト、チャイルドシートなど自動車の安全システムを専門に製造、販売する部品メーカーです。事故後の被害を軽減する「パッシブ」の安全システムでは世界2位のシェアを誇ります。なかでもエアバッグは、ホンダと一緒に世界に先駆けて開発した技術なんですね。

超優良企業だったはずのタカタは、なぜ、破綻に追い込まれたのでしょうか。問題点は多く指摘できますが、ここでは二つをあげてみたいと思います。

一つは、対応の遅れです。言い方を変えれば、創業家一族の決断の遅れです。初期対応の決定的なマズさです。つまり、危機管理の欠如ですね。

ご存じのように、破綻の引き金となったのは、2004年以降に発生している欠陥エアバッグ問題です。最初のリコールは08年でした。すでに9年前の話です。欠陥が疑われてすぐに徹底的な対応をしていれば、問題はここまで大きくならなかったのは間違いない。

自動車の安全技術は、いま、世界の関心が高まっている分野です。そのなかで、タカタは情報公開を避け、トップの辞任など、責任を認める対応もしませんでした。14年には、米国議会上院の公聴会に呼ばれましたが、タカタの三代目社長の高田重久氏は出席しなかった。エアバッグ暴発について「原因はわからない」とうやむやにして、言い逃れを続けてきました。

社内外からは、重久氏の引責辞任を求める声もありました。しかし、創業家のバックには、“ゴッドマザー”がいて絶大な権力を握っていたため、重久氏は辞任せずにここまできた。

いまごろになって辞任を表明しましたが、クビが回らなくなる前に、外部からトップを招いてタカタ再建を任せていれば、あるいは再建できていたのではないか。

もう一つは、自動車メーカーのリコール対応に問題点があった。

トヨタ名誉会長の豊田章一郎さんは、今回の件に関して、「タカタをつぶすなよ」と話したといわれます。メーカーの創業家同士、通じる思いもあったのでしょうかね。日本の自動車業界にとって、大切な部品メーカーであったのも確かですからね。

今回のリコールをめぐっては、自動車メーカーが事態を収拾すべきだったのではないでしょうか。日本の自動車メーカーのなかで、その役割を担うとすれば、さしあたってタカタの株主で、最大顧客でもあったホンダでしょう。

ところが、ホンダとタカタとの間で、初期対応の際にボタンの掛け違いがあった。リコールの公表をめぐってもあったといわれています。また、あえていえば、早い段階でホンダの主導権のもとでトヨタ、日産などの協力を得て収拾できなかったのか。残念ながら、ホンダには、国内メーカーをまとめ、仕切る意思がなかったと思われます。

かくして、タカタの重久氏が経営責任から逃れ続けた結果として、9年もの間、ズルズルと問題を引きずった。その間、問題は拡大し、タカタは破綻に追い込まれたという次第ですね。

タカタは、中国の寧波均勝電子傘下の米自動車部品メーカー、キー・セーフティ・システムズ(KSS)に、約1750億円で譲渡されることになりました。

中国としては、棚ぼたでしょう。中国はいまや、米国を抜いて世界最大の自動車市場であり、国策として自動車メーカーを育てようとしています。タカタの技術は、ノドから手が出るほどほしかったのは間違いない。

今回の問題からは、自動車メーカーや部品メーカーに限らず、日本企業は学ぶべきことが多くあると思います。

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