ソニーは7月3日、腕時計のバンド部分にスマートウォッチとして必要な機能、電池などを集約した「wena wrist(ウェナリスト)」の説明会を都内で開催しました。そのレポートです。
wenaとは“wear electronics naturally”の略です。ソニーは、「人々にもっと自然に、違和感なく、ウェアラブルデバイスを身につけてほしい」というコンセプトで、さまざまなウェアラブル商品を開発する「wena project(ウェナプロジェクト)」を展開しているんですね。
同プロジェクトの第1弾となる「wena wrist」は、入社2年目でソニーの新規事業創出部 wena事業室統括課長に抜擢された、弱冠27歳の對馬哲平(つしまてっぺい)さんのチームが開発したスマートウォッチなんです。
「このような発表は今までやったことがなくて大変緊張しております。どうか初孫を見るような気持ちで見守っていただけると嬉しく思います」
と初々しいばかりの説明会でしたよね。
しかし、一度説明会が始まってしまえばお手の物というか、慣れたものでしたね。というのも、對馬さんはソニーの新規事業創出プログラム「SAP(Seed Acceleration Program:サップ)」の社内オーディションを、100チームの中から勝ち上がり、クラウドファンディングで1億円を集めた異才の持ち主だからですね。
ソニーは、新規事業の立ち上げを加速させています。その象徴となるのが「SAP」です。2014年4月に「既存の事業領域にとらわれないビジネスを」という平井社長の号令のもと、社長直轄でスタートしたプロジェクトです。14年度から16年度までに9回のオーディションが開催され、約600チームが「SAP」に応募した。
現在事業化されたビジネスは12あり、スマートフォンを使って簡単に鍵を開け閉めできる「Qrio Smart Lock(キュリオ スマート ロック)」や、モーターを内蔵したキューブを、本体につながるリング状のコントローラーで制御する仕組みの玩具「toio(トイオ)」など、多岐にわたる商品が開発されています。
「wena wrist」は、腕時計のバンド部分に電子マネーやスマートフォンの通知受け取り、持ち主の走行歩数などを記録する活動ログを独自技術で内蔵したスマートウォッチなんです。
上記3つの機能を搭載したステンレスバンドが11日に発売されるほか、新開発の小型フェリカモジュールが組み込まれた、電子マネー機能を搭載したレザーバンドが12月下旬に発売の予定。手持ちの腕時計のヘッド部分を外して付け替え、機械式時計をスマートウォッチとして使うこともできるんですね。
「アナログ時計のカッコよさとスマートウォッチの便利さを融合できないかと考えました」
というのは對馬さんのコメントです。
課題はグローバル展開です。IDC Japanの調査によれば、2016年の世界ウェアラブル市場シェアはFitbitが22%で首位を走り、以下、Xiaomiの15.4%、Appleの10.5%と続きます。「wena wrist」が現在展開している日本市場のみならず、いかに世界の競合に食い込んでいくか、今後の挑戦に注目です。
平井社長は「SAP」の取り組みについて、5月の経営方針説明会で次のように述べたものです。
「まだ一つ一つの事業の規模は大きくありませんが、社内に常に新しいことに取り組む風土を植え付けると共に、事業を経営するマインドとスキルを持った若手社員の育成にも繋がっています」
「SAP」は、平井氏の肝入りのプロジェクト。「SAP」から生まれたビジネスが、ソニーに新風を吹き込んでいるのは確かではないでしょうかね。