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経済ジャーナリスト 片山修 | Osamu Katayama Official Website

片山修のずたぶくろⅡ

経済ジャーナリスト 片山修が、
日々目にする種々雑多なメディアのなかから、
気になる話題をピックアップしてコメントします。

エコカーの本命はEVなのか

なんだか、世の中では、EV騒ぎが巻き起こっています。独フォルクスワーゲンのディーゼル不正をきっかけにEVシフトが起き、中国、インド、イギリス、フランスも相次いでエンジン車の規制を表明しました。でも、実際のところ、どうなんでしょうか。

2015年5月の包括提携から2年2か月。トヨタ自動車とマツダは4日、資本業務提携で合意したと発表しました。目的の一つに、EVの共同開発があります。

※4日に行われたトヨタとマツダの資本業務提携会見

「アップルやグーグルのようなIT企業との戦いなど、海図なき、前例のない戦いが始まっています」と、トヨタの豊田章男社長は4日、都内で開かれた記者会見の席上、強い危機感を示しました。

トヨタは昨年12月、「EV事業企画室」を設置し、EVの事業化に向けた取り組みをスタートさせました。しかし、EVへの出遅れ感は否めない。一方のマツダも、単独でEV開発に取り組むには限界があります。

「両社の設計、開発の技術を融合して、競争力のあるEVの基本技術を開発します」
と、マツダの小飼雅道社長は会見の席上、語りました。

EVシフトに乗り遅れるわけにはいかない。勝ち残るために、トヨタとマツダは、ノウハウを持ち寄り、開発力を強化しようとしている。モノづくりの知恵を結集して、効率よく開発を行い、一気に巻き返しを狙おうということなんですね。

では、両社は、いったいどんなEVをつくろうとしているのでしょうか。

豊田氏は会見の席上、「電気自動車はどんな形をしていようが、その特徴を出しにくい」と持論を展開したうえで、これからのEVの課題は、ブランドの“味づくり”だと語りました。

つまり、EVは肝心の“走り”がどれも同じになる。それを打破して、いかに“味”を出すか。

トヨタとマツダは、EVの基本構造の技術については共同で開発しますが、商品化する車種の設計や生産はそれぞれが別途に進め、別々のブランドで販売する計画です。

トヨタとマツダの共通点は、“運転する喜び”への強いこだわりです。“運転する喜び”のもとに共通のプラットフォームをつくり、それぞれが、持ち味を生かしながら、EVの“味づくり”をしていきます。

新興勢力の米テスラは7月下旬、同社初の普及価格帯EV「モデル3」の販売を開始。日産は9月、フルモデルチェンジした新型EV「リーフ」を発売予定です。

いよいよ本番を迎えるEVの市場争いを前に、トヨタとマツダはブランドの“味づくり”で先行EVを追い上げる戦略です。

ただし、EV、EVと騒ぎますが、まあ、そんなに慌てることはない。三井物産戦略研究所によると、2016年の世界の新車販売台数に占めるEVの比率は0.5%に過ぎない。2030年でも、まだ9割がガソリン車という予測さえある。EVが早期に普及するかどうかは、まったくの未知数です。

問われているのは、EVを開発できるかどうかではなく、次の100年を生き抜けるかどうかです。

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