“イクメン”や“カジダン”が増えています。にもかかわらず、家事は依然、女性に重くのしかかっている現実がある。家事労働の分担をめぐって、忙しい共働き夫婦の不満は増すばかりですよね。
※パナソニック常務執行役員の中島幸男さん
パナソニックは24日、来年3月に迎える同社の家電事業100周年を記念し、30代から40代の共働き世帯をおもなターゲットにした家電の製品群を「クリエイティブセレクション」の名称で展開すると発表しました。
17年度下期から13の製品を市場投入、20年にかけて製品群を増やし、海外にも展開する計画なんですね。
「100周年はまだ道半ばです。次の100年もよりよい暮らしを目ざすというコンセプトは不変ですが、お客さまの求めるニーズは変化しています」とは、パナソニック常務執行役員コンシューマーマーケティング担当の中島幸男氏のコメントです。
指摘するまでもなく、この100年、日本の家族形態は大きく変化しました。内閣府によると、1980年以降、夫婦ともに雇用者の共働き世帯が増加し、97年以降は共働き世帯数が男性雇用者と無業の妻からなる世帯数を上回っています。
総務省の「労働力調査」によると、共働き世帯数はすでに1000万世帯を超え、いまなお伸び続けています。
そんな現状下において、共働き夫婦からは、家事分担の不満がしばしば聞かれる。というのは、共働きである以上、家事分担は当たり前にもかかわらず、完全に平等にはなっていない。これが、夫婦の不満の種になっているんですね。
そこで、パナソニックは提案した。家事の役割分担ではなく、“家事シェア”です。
その根拠が、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、スマホ操作などの新しい技術です。
一例は、スマホで操作できる、ななめドラム洗濯乾燥機です。事前にタンクに液体洗剤と柔軟剤をためておけば、衣類の重さから自動で必要量がインプットされる。外出先からもスマホ操作で運転予約や状況確認ができる。
スマホに「スマホで洗濯」アプリを入れておけば、夫が、会社の昼休みに遠隔で洗濯から乾燥までを完了させられるといった具合です。
「うちも共稼ぎなんですが、仕事の帰りに、2人の子供を保育所に迎えにいって、風呂に入れ、食事をさせ、寝かしつけるまで、毎日、てんやわんやなんですね。この洗濯機があれば、仕事場でアプリを起動させ、洗濯を終えられる。子供を風呂に入れた後、洗濯機からふかふかのタオルを取り出せるなんて夢のようですね」とは、展示会場での男性説明員のコメントです。
また、ロボット掃除機は、専用スマートフォンアプリ「RULOナビ」によって外出先からの操作が可能です。しかも、人工知能とカメラセンサーによって、間取りを学習し、ごみの多い場所などを認識しながら、しっかり掃除をしてくれる。これなら、掃除に慣れない夫が外から操作しても、ごみの取り残しなく、きめこまかい掃除ができるというわけです。
ご存じのように、松下幸之助は、“水道哲学”すなわち、家電製品を水道水のように社会に広め、結果として、便利家電の普及によって女性の家事負担を軽減した。
創業時の三種の神器、テレビ、洗濯機、冷蔵庫をはじめとする便利家電にかわって、いま、パナソニックが広めようとしているのは、スマホ家電です。IoT、AI、スマホといった新しい技術を使って、共働き世帯の家事負担を軽減しようとしているんですね。
スマホ家電によって、“家事シェア”が進み、夫が家事に参加するようになれば、女性の活躍はもっと進むに違いない。
家電の衰退がいわれるなか、パナソニックは共働き世帯の新しい生活スタイルの構築に向け、舵を切ったといえます。
「次の100年は、一つひとつの商品を磨き上げるとともに、総合家電メーカーの強みを生かし、複数の商品の組み合わせで顧客の願いをかなえていく」と、中島氏はいいます。
津賀一宏社長が、自動車や住宅といったB2B事業に舵を切り、事業内容は大きく変貌を遂げつつありますが、パナソニックにとって家電メーカーの顔が依然として重要であることに変わりはない。
新しい生活スタイルの提案は、パナソニックが国内家電メーカー首位の座を守りつづけるための試金石といえるでしょうね。